【一橋からリオ五輪へ】中野紘志選手インタビュー

 8月に行われたリオオリンピック。本学OBの中野紘志選手(平23商)が大元英照(ひでき)(アイリスオーヤマ)選手とボート男子軽量級ダブルスカルに出場した。僅差で予選通過を逃した日本代表ペアは敗者復活戦にまわるも準決勝進出はならず、順位決定戦を経て総合15位に終わった。帰国後の中野選手に、オリンピックでの経験と今後の展望について聞いた。

 大会前から日本では現地の治安や設備に対する不安が高まっていたが、会場の警備は強化されており、交通もスムーズだったという。とはいえ強風によるレース延期が直前に決定したり、ブラジル特有のにぎやかな応援がレース直前まで続いたりと、普段とは異なる環境だったようだ。これに対し「自分たちの漕ぎをするだけ。集中を乱されたりアウェーだとは感じたりはしなかった」と話す。先行してそのままゴールする形を目指した日本だが、技術と体力を持ち合わせる強豪国に追い抜かれる展開が目立った。「もちろんもっと上位が良かったが、実力としては妥当。力を出し切れたことには満足している」

 メダルという形の結果は出なかったが、オリンピックに出場し、また現地で他競技のトップアスリートを間近で目にしたことは良い刺激になったという。2020年の東京オリンピックにも「(商科大以前を除いて)一橋卒のオリンピック金メダリストはいない。誰も成し遂げたことのないことをやりたい」と意欲を示した。

 また、代表選手として日本のボート界についても考えている。競技の強化に向けて「個人の努力だけでなく、日本ボート界全体が強豪国のノウハウを吸収し環境を変えることが大切」と話した。

 いずれ引退したら何をしたいかという質問には、「努力をしているのに結果が出ない人を減らしたい」と答えた。「具体的にどういたらいいかは自分自身で実験中」と笑うが、ボート界に限らず考え方や環境を変える後押しをし、成功のきっかけや刺激を与えられるようになりたいと語った。自身はリオオリンピック出場のために環境を変えようと、2015年秋にNTT東日本を退社、プロ選手となった経歴を持つ。現状に留まるなと訴える言葉は、経験が伴っているだけあって重みがある。

 多くの本学卒業生が進む道ではなくボートの道を選び、日本の多くの選手が選ぶ実業団という道から離れてプロになった中野選手。自分が何をしたいのかを見据えて環境を変え、今いる枠を超えるための思考と努力を重ねている。選手としてどこまで登りつめるのか。中野紘志として何を成し遂げるのか。今後も目が離せない。