6月1日、本学21番教室で、学生に投票を呼び掛ける「選挙出前授業」が行われた。国立市選管・風見康裕事務局長が、若年層の低投票率問題を解説し、選挙制度や投票方法、投票先を選択するためのWebサービス「ボートマッチ」による情報収集法などを紹介した。

 学生の投票率を上げる取り組みとして全国紙2社も取材に入る一方、集まった学生はおよそ50人。大教室にしては、やや寂しさを覚える光景だった。

 出前授業を計画したのは、言語社会研究科の小岩信治教授。学生の投票率を上げる「100% GO VOTE」キャンペーンを立ち上げ、主に投票制度の周知に取り組んでいる。

 前任校で選挙に行かない理由を尋ねると、多くの下宿生が「住民票を移していないから」と答えた。「選挙のために帰省するわけにもいかない」と諦めていたが、その後、郵送で投票する不在者投票の存在を知り、制度周知の重要性を実感した。

 当初は、下宿先で投票するための住所変更手続きの方法を示すポスターを制作したが、転入先で投票するための手続き期限を過ぎてからは、今の住所のままで、期日前投票や不在者投票の区別や方法を示したポスターに切り替えた。選挙が近づくにつれて、「ポスターを使わせてほしい」という他大からの問い合わせも増えている。

 若者の低投票率が高齢者優遇の政治を生み出し、将来の日本を担うはずの若者に大きな影響を及ぼすと小岩教授は考える。「どこに投票していいのかわからない。投票先の選択を誤るかもしれない。それでも投票して、将来の自分にその結果が降り掛かってきたあとの反省のなかから、民主主義が育って いくのだと思います」

 キャンペーン自体は投票制度の周知に徹して、ポスターにも小岩教授の政治信条は反映されていない。しかしそれを見た一橋生はこう言った。「先生、これってとっても政治的じゃないですか」

 「私はポジティブに捉えますよ。このポスターに政治性を見いだす一橋生は、それだけで他の若者よりも政治について考える能力がある。積極的に発言する人、それ を見て冷笑する人。大学にはいろいろな人がいて構わない。むしろ『黙っているけど考えている』一橋生に期待しています」