来年度の本学一般選抜(前期日程)は、2月25日と26日の両日にわたって行われる。受験まで残すところ3カ月、受験生は何を意識して勉強していけばよいのだろうか。本紙は大手予備校・河合塾に依頼し、どの学部でも配点が高い英語と、特に難易度が高いとされる数学について、二次試験の傾向分析や対策方法を寄せてもらった。第一線で活躍する講師からのアドバイスを、直前期の学習のヒントとして活用してほしい。
<英語科講師>新野元基先生
近年、一橋大英語の出題形式は大きな変化が続いています。読解問題は超長文1題になったり2題に戻ったり、この数年は安定していません。英作文も、2023年は絵を描写させる問題でしたが2024年は意見作文になるなど毎年のように形式が変わっています。受験生からは「一橋大英語は対策がしにくい」という声も聞きますが、むしろ「変わること」が一橋大英語の特徴の1つと考えておいた方がいいかもしれません。特に、2025年からはリスニングが出題されなくなることがすでに発表されており、これによって、次年度の大問の構成は大きく変わることが予想されます。
もちろん変化のない部分もあります。それは「奇をてらった問題はなく、しっかりとした英語力があれば報われる問題」ということです。例えば読解問題は、2020年までは700語前後の長文2題だったものが2021年から1500語前後の超長文1題になり、そして2024年は再び2題に戻るなど、表面的には大きな変化があるように見えますが、その中で問われる設問に大きな変化はありません。和訳・説明・空所補充・語句整序など多様な問題で長文の内容理解を問うという形式は、長文の長さや大問の数に関わらず一貫しています。ほぼ毎年変わる英作文にしても「多様な語彙を用いて叙述する力」「情報を分析し、能動的に考えて意味を発信する力」「適切な形式をもって論理的に文章を構成する力」という3つの力が変わらず問われていることは、 大学が発表する出題意図で明示されている通りです。受験生としては表面的な変化に惑わされず、語彙・語法・文法の知識に裏付けされた英語力を身に着けていくことが第一なのです。
そのうえで一橋大らしい対策をするとしたら、和訳や説明問題といった、読解問題の中に登場する日本語の記述問題への取り組みでしょう。一橋大は英語の満点が高いわりに小問の数が少ないため、1問あたりの配点が非常に高くなっており、結果的に記述問題で得点差がつきやすい構成です。特に、説明問題は、設問で求められている内容を正確に把握し、正しいプロセスで解答することで失点を防ぐことができます。長文の長さの違いはあっても、その中で問われる説明問題は変わらず出題されていますので、過去問題に取り組んで対策をしておくことも有効でしょう。
一橋大の英語は高度な知識が問われるわけではなく、教科書レベルの語彙・語法・文法が確実に身についていれば十分対応できる問題が毎年出題されています。このため、努力が報われやすい問題になっていることは間違いありません。土台となる英語力をしっかり磨き、合格をつかみ取ってください。
<数学科講師>横田英克先生
<出題傾向・特徴>
一橋大入試の数学は文系では最高レベルの難しさと言えます。
最近は、典型的な問題の割合が増えているとはいえ、小問がつかない問題も多く、解答の全体像を把握して解かなければなりません。よって、実力差が明確に現れます 。
特徴としては、①数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・C(ベクトル)から幅広く出題され、複数の分野にまたがることも多く、また、例年必ず出題される整数と確率に加え、微積分の問題も頻出です。基本的な図形感覚を必要とする空間図形もよく出題され、その扱いにベクトルなどの力も必要です。
②微積分、図形と式の問題は計算量も多く、文字の対称性や循環性などの式の特徴に着目して、式を扱うセンスも必要です。
<分野別対策>
~頻出分野、典型的な問題をしっかり理解して解こう~
【整数】
典型的な手法を教科書の例題や市販の問題集で学んだうえで、過去の一橋大学の入試問題にあたるのが正攻法です。
【確率】
一般の個数nで出題されることが多いので、状況を把握するためにnが1、2、3といった最初のいくつかのときを考えておくと、意味もつかめるし、最終値のチェックにもなります。また、漸化式などの数列の知識も必要です。
【図形】
問題文を読んで図形を描き、さらに図形の動きを把握しましょう。そして、初等的に攻めるのか(幾可的性質を見抜いて解くのか)、あるいは解析的に攻めるのか(座標やベクトルを設定して計算するのか)を選択します。普段から、平面・空間を問わず図を描いていくことで、図形の直観力を磨いてください。
<日ごろの学習アドバイス>
一橋大の入試は、易しめの問題は確実に解き、難しめの問題はいかに部分点を取るかが重要になります。
難易度の順に並んでいるとは限らない5題から、的確に易しいものを選び取るには、普段から解き始める前に難易度を推し量り、解いた後、その判断が正しかったかどうかを振り返ってみる習慣を身につけるとよいでしょう。
整数、確率などの分野は特に定義の理解がポイント。教科書などで定義を理解したうえで、問題にじっくりと向き合って思考する姿勢が大切です。
加えて、確実に得点するには計算力が必要です。計算力は、スポーツでいえば体力のようなものであり、数学の大切な実力のひとつです。普段の勉強でケアレスミスをしたときは、消しゴムで消さず、赤ペンで直してみましょう。それを繰り返すと、自分のミスの傾向が把握できます。意識するだけでもミスを減らせますよ。
※数学科のみ「栄冠めざしてvol.2」2024年(河合塾グループKEIアドバンス発行)より編集