【新任教員インタビュー】田口陽子専任講師(社会学研究科)

2018年度新任教員インタビューでは田口陽子専任講師(社会学研究科)を取材。専門の文化人類学やこれまでの研究について語ってもらった。


――専門の文化人類学について
文化人類学というのは、もともと異文化の研究をしてきた学問です。ヨーロッパ人が世界各地に自分たちと異なる姿をした人たちがいると知り、それを不思議に思って始まりました。同じ人間なのに全然違うという疑問と、多様でも同じ人間同士なのではないかという二つの軸を行ったり来たりしながら、人間とは、人類とは何なのかを探求しているのが人類学だと思います。

――これまでの研究について
博士課程ではインド都市部の市民社会運動を研究しました。インドではイギリスから入ってきた「citizen」や「civil society」といった言葉を使って市民運動が行われています。そういった言葉がインド現地ではどういう文脈で使われ、どう理解されているのか。言葉が同じでも、使われる文脈によって意味や、そこから何が実際に行われるかも変わってきます。でも単にある言葉の使われ方を調査しただけではなく、私たちの「社会」や「市民」を考え直すための一事例として、インドにおける「市民社会」を見ていました。

――人類学の魅力について
人類学を勉強していると、世界の意外な物事や出来事に驚かされます。どこかの民族の一見理解不能な儀礼が理に適ったものに見えてきて、それと同時に当たり前だと思っていた自国の風景がすごく変なものに見えてくる。そういう経験をできることが人類学の魅力の一つかな、と思います。

――一橋大学に赴任するにあたって
所属は社会学研究科ですが、国際教育センターの留学生相談アドバイザーも兼任しています。一橋生は多様性を大事にしようとか、すごく考えていると思うんです。そのうえで、その多様性を保証する土台自体を問い直していくような人類学的視点も持ってほしくて。留学生と日本人学生が交流を通して、お互いに今まで持っていた思考の枠組みを壊しあったり、学びあったりしていける環境を作りたいと思っていますね。

――一橋生へメッセージ
まじめな学生が多いという印象で、それはとても大事なことなのですが、自分のまじめさや正しさの基盤が一つ壊れても対応できるような、全然違う視点をいくつか持っておくことが今後役に立つと思います。そういう意味では人類学を勉強してみるのはいいんじゃないかなと(笑)。
あとは語学ですかね。「母語」以外の言語で思考すると、必然的にこれまでとは違う土台で物事を考えることになります。例えば仕事で役に立つからというだけでなく、そういう意味でも、他言語を学ぶのは良いのではないでしょうか。