【もしもしとなりの一橋生】森田慧さん(修経管1)

 「若い人々に農業に興味を持ってもらうにはどうしたらよいのか」「農家に自分が提供できるメリットは何なのか」本学MBAを休学し、今年度から新たな農業プロジェクトに挑む森田慧さん(修経管1)は問い続ける。若者と農業の間に立とうとする姿勢が印象的だった。

 2014年に本学へ入学、直後に農業サークル「ぽてと」の立ち上げを行う。17年からはぽてとの同期と共に、農業団体「よんあーる」を結成した。ぽてとでは学生主体で野菜づくりや農業の現場見学を行う。よんあーるではさらに対象を若手社会人にまで拡大し、活動に取り組んだ。今春からは「よんあーる」の発展的解消という形で単身、新プロジェクト「トテポラボ」を開始する。

 様々な形で活動してきたが、常に「若者と農業との距離を近づけること」を考えてきた。中山間などの条件が不利な地域に位置する農家は、大規模農業へと舵を切ることもできず、高齢化により消えていかざるを得ない。そのような小規模な農家も含めた農業全体を盛り上げるカギとして、若者に注目している。その具体例としては、日本各地の中山間の畑を若者が自由にめぐり、農業に直接関わることなどが挙げられる。
 そのための短期目標として、若者の潜在的な農業への興味を引き出すことを掲げる。よんあーるで行った所沢市小手指で市民農園をシェアするプロジェクトはその一環だ。農業に興味のある人々が休日に訪れては、一つの畑を皆で運営することのできるシステム作りを目指した。

 しかし問題も山積みだ。根本的な問題として、当の農家が変化を求めていないことが挙げられる。今の卸先で十分という意見を聞くことも多い。「若者が農業のフィールドに入ってくることは『良いこと』であるが、それはある意味で役所の基準だ。肝心の農家の方にもメリットを感じてもらいたい」と話す。
 また、若者への農業のアピール方法も注意が必要だ。例えば、近年は農業を打ち出す方法の一つとして農業をお洒落にラッピングし「農のあるライフスタイル」として提供するものが多い。しかし農業と「農のあるライフスタイル」は異なる。農家からは仕事を馬鹿にしているとも受け取られかねない。「個人的な問題として、きらきらしたものが得意ではないし、他と同じことはやりたくないという気持ちもある」と農業の打ち出し方に頭を悩ませる。
 若者と農業をつなぐ立場の難しさを感じながらこの1年、双方を巻き込む方法を模索する。