一橋生なら誰もが経験した入学試験。今年度から推薦入試の枠が増え、商学部以外でも実施されるようになった。語学試験などの出願資格を有することが条件で、センター試験の点数のほか、自己推薦文、小論文、面接などが評価対象となる。推薦入試合格者の二人に試験内容や受験の感想を聞いた。


 Aさんは本学について詳しく知ろうとウェブサイトを閲覧した際、推薦入試の存在を知った。英検1級に合格しており、センター試験が得意だったため、チャンスと思い出願したそうだ。小論文は漢字や語句説明のような通常の国語の試験のようなものと、経営に関する課題文を読んで筆者の考えをまとめ、自身の意見を述べる問題で構成されていた。90分の制限時間の中で自分の実力を十分に発揮できたという。
 面接試験の面接官は二人で一人は優しく、もう一人は厳しかった。「なぜ日本経済は伸び悩んでいると思うか」のといった大きなテーマについても聞かれ、口述試験のような面もあった。しかし極度に難しい質問でAさんが回答に困ると面接官も優しくなったという。「一橋の先生は本当は優しいんだなと感じた」と試験を振り返って笑う。
 全体を通じて試験は成功。Aさんは、推薦入試を通して大学で何がしたいのかを考える機会があってよかったと話す。自己推薦文を書くには大学入学の目的意識をはっきりさせる必要があり、面接を受けることで他者の視点を導入することもできる。「推薦入試は例え落ちても自分のためになるし、その後の大学生活のモチベーションにも繋がる」。出願資格のある人には積極的に推薦入試を検討してほしいと語った。

 そんなAさん、試験日の昼食に用意したサブレが多かったため、ふと思い立って後ろの席の人に分けてあげたそうだ。入学後に同じ部屋で受験していた人と再会し、その人に言われた言葉が「ああ、あの挙動不審な子ね」だった。「入学前から挙動不審のレッテルを貼られてしまったが、お陰で仲良くなれてよかったなあと思いました」


 Bさんは一般入試を目指していたが、語学試験のスコアが基準を満たしていたため推薦入試を受験した。
 小論文は、20世紀の経済学の発展に関する課題文を読み「21世紀の経済学はどうあるべきか論じろ」というもの。新聞やニュースで時事問題を調べた程度では太刀打ちできず、もっと大局的な視点で物事を考える力が問われる。Bさんは父親と21世紀の経済学のあるべき姿について議論したことがあるため、満足のいく解答が書けた。とは言え90分で1200文字の小論文を書くのは決して容易なことではない。回答は誤字脱字があった。
 面接では小論文の出来について問われ、誤字脱字のことを打ち明けると面接官は笑っていたという。面接官は3人で、受験生から見て左右に質問が易しい人と厳しい人が座り、真ん中は事務員のような人だった。
 冒頭から志望理由を5分から10分で述べろと言われた。質問の大半は志望理由に関するものだったという。今まで読んだ中で印象に残った本を聞かれた際には、本学経済学研究科の共著のおもしろかった章について話すと、笑顔を返してくれた。

 ここまで順調に見えたBさんだが、面接中には緊張して矛盾したことを言ってしまったのではないかと気になっていた。このことが気になっていたが、結果は見事に合格。Bさんは推薦入試を「有意義な入試制度だと思う」と振り返った。