佐藤ゼミで扱うのは財政学・公共経済学等の抽象的な経済学の一分野だが、これらはあくまでも枠組みに過ぎない。出発点は消費税や医療といった私たちの生 活と密接に関わる社会問題への問題意識だ。これらに対して、経済学に立脚した思考を発展させることで解決策としての政策を考案する、という非常に具体的で 実用的なプロセスが行われている。
卒論のサポートが手厚いことで有名な佐藤ゼミでは、3年の冬学期にはテーマを決定し、以後の変更は許されな い。夏学期は公共経済学に関する洋書を輪読して基礎知識を蓄積しつつテーマを探る。 夏休みは、学生の政策立案シンポジウム等を実施するISFJ日本政策学生会議に参加して獲得した知識をアウトプットする。そして、卒論のテーマ決定後は、 長期間にわたる発表と議論を通じて論文の内容を深化させていく。
シビアなことでも有名な佐藤ゼミ。ゼミ内での発表では、高いレベルの考察が求め られる。あるゼミテンは、「中途半端な発表では先生に怒られるし、ごまかすとすぐに見抜かれてしまう」と話す。学生間の議論も活発で、白熱した議論が21 時頃まで長引くこともあると言う。だが、それは決して苦痛ではなく、深めあえる楽しさや喜びに満ちている。「気づいたら長引いていた、という感じ」「はじ めは付いて行くのが大変だったけれどそれを乗り越える過程で楽しくなった」。一方、佐藤教授はゼミテンへ細かく指示をしない。「ゼミにおける教員の仕事は 場を提供すること。学問的な指導は与えるが、ゼミ生たちが互いに切磋琢磨しあう場にするのが理想」と語る。
そんな佐藤ゼミに求められるのは「元 気」、「明るさ」そして「学びたい・知りたいという意欲」。成績は不問だ。その結果、教授や授業の雰囲気に惹かれたり、あえてシビアなゼミに入ることで自 分自身を変えたいと考えたりする者が集まる。「体育会ボート部に所属していて、このゼミに入るときに時間的に難しいのでは、とは言われた。けれど、その大 変さの中で自分の方向性を見つけて効率化していくプロセスが大事だと思う」と語るゼミテンもいた。
佐藤教授の口癖だという「大学で何を学んだかではなく、どう学んだか」。学生にとって専門的な知識を身に着けるだけでなく、自分自身の思考力で世の中を分析し意見を述べることが大切、ということだ。