大学の勉強は、受験勉強とは違う。多くの新入生が、その乖離に動揺し、入学当初にはあった勉強へのやる気が、気づけば小さな灯し火になってしまうケースも少なくない。 そんな中でも、大学の学問の面白さを見つけ、研究者をめざすような学生も多数いる。今回取材したutaさん(経4)は、ゲーム理論やミクロ経済学の研究者を目指しており、Ⅹ(旧Twitter)上でも、経済学の気づきを取り上げた学問的な発信をしている。そんなutaさんに学問の面白さを語ってもらった。
高校時代から数学が好きだったutaさんは本学経済学部への進学が決まり、初年次に必要となる微分積分や線形代数、さらには集合位相論などを自学した。そうはいったものの、特に線形代数の初期は、行列の計算をするだけで、面白さを感じることは少なかった。だが、学習を進めていくうちに、それが膨大なデータを簡単に処理できるツールとなることに気づき、徐々に大学数学にものめりこんでいったという。
好きだった数学に関しては、面白さを感じやすかったが、ほかの科目ではつまらなく感じることも多かったそうだ。例えば、統計学入門では、データの内容を要約することに終始するように感じられ、退屈だった。また、基礎ミクロ経済学では「数学的に厳密じゃない」と感じた。そこで、より数学的に経済にアプローチする数理経済学を自学したところ、経済学で登場する法則が数学で証明されることに感動したそうだ。また、集合位相論で学んだことや、数理解析学で学んだようなことがつながり始めて、より面白さが増幅されたという。
通常ゼミは3、4年生のみであるが、utaさんが2年生の時に、ゲーム理論のゼミの教授にメールで連絡すると、特別に聴講することができた。そこでは、本学名誉教授であり、ゲーム理論の大家である岡田章氏の「ゲーム理論」を通読した。ゲーム理論の学習は非常に楽しく 、数理経済学とゲーム理論が現在の勉強領域になっているそうだ。ゲーム理論はオークションなどの市場にも応用可能な学問であり、勉強のモチベーションは、純粋に楽しいと思った勉強を、オークション理論のような社会に役立つものにできたらいいという考えがあるからだと教えてくれた。
現在は研究者を志望しており、院試が迫っていることに加えて、RA*(リサーチングアシスタント)をしているそうだ。その影響で、春休みは一日に10時間も勉強をしたという。しかし、それを辛そうに語る様子は一切ない。
最後に、どのようにして興味のある学問領域を見つけるのか、utaさんがそのヒントを教えてくれた。「とにかくいろんな授業に触れてみるとよいと思います。一口に経済学といっても、歴史からアプローチする経済史や、データからアプローチする計量経済学など、多様なやり方が存在します。自分にとって興味のある分野は必ず見つけられると思います」。インタビューでは経済学の話が中心となったが、ほかの学問に関しても、多様なアプローチがあることに変わりはない。熱中できる学問に出会えるのではないだろうか 。
*大学が行う研究に関してサポートを行うもの