一橋祭恒例企画である「四学部合同講義」が本館31教室にて2日目に行われた。 今回のテーマはSDGs(持続可能な開発目標)。四学部を代表する4名の教員がそれぞれ講義を行い、講義の最後には参加者との自由な質疑応答が交わされた。当企画は、 受験生をはじめとする学外の方が本学の講義を体験する貴重な機会となった。
 「四学部合同講義」は一橋祭で過去10年以上にわたり行われている人気企画である。四学部の教員がそれぞれ約25分の講義を行い、最後に参加者との質疑応答の時間も設けられる。参加者は150名ほど。その多くは本学の講義に関心のある受験生だが 、講義を聞き熱心にメモを取る一般参加者の姿もあった。すべての講義はSDGsという共通テーマを掲げるが、SDGsの関連項目を端緒として学部ごとに異なる角度からの講義が展開された。
 商学部の講義を担当したのは中島賢太郎准教授。SDGs8番目である「働きがいも経済成長も」に関連し、イノベーションをもたらす対面コミュニケーションについての講義を行った。対面コミュニケーションをどのように分析するかという問題に対し、衛星画像データ等の最新技術を用いた研究が紹介された。
 経済学部からは横尾英史講師が登壇した。SDGs13番に当たる 「気候変動に具体的な対策を」を中心に、専門とする環境経済学の研究について講義した。横尾講師によると、経済学は環境問題とは縁遠いと一般に考えられている。 しかし実際には、経済学の知識が環境問題への対策を検討する際に用いられているとして、経済学と環境問題との深い関わりを示した。
 法学部の市原麻衣子教授は、SDGs16番「平和と公正をすべての人に」に関連し、コロナ禍における民主主義の危機について講義した。民主主義の危機に対する諸外国の外交政策を、メディアや行政文書で用いられた語句のデータ分析を通して論じる研究を紹介した。
 社会学部からは、山田哲也教授が教育社会学の講義を行った。講義の前半で論じられた「教育の意義とは何か」という問いは、SDGs4番「質の高い教育をみんなに」を考える上での前提となる。問いの答えとして、教育は人の自由を支え、生活を保障する基本的人権としての意義を持つという考えが示された。後半では、学力格差の問題に焦点をあて、テストという公正なシステムを介して学力格差の階級が再生産されるという問題点が提起された。
 全ての講義は、各学部の豊かな個性と高い専門性が感じられるものであった。加えて、社会科学における数理・情報技術の活用も強調されていた。講義において紹介されたすべての研究でデータ分析等の先端技術が用いられていることは、本学における研究の新しさを示している。当企画は、受験生の学部選びや、一般参加者が最新の研究を知るための一助になったのではないだろうか。講義を通じ本学における学びの魅力を伝えた4名の教員は、最後に受験生へ激励のメッセージを述べ、合同講義を終えた。

合同講義の冒頭、講師紹介の様子。31番教室には、多くの人が訪れた。