前期入2面尾畑先生試も終わり国立キャンパスが静寂を取り戻した2月の暮れ、磯野研究館の一室へ。今回は尾畑裕教授(商学研究科)のお昼にお邪魔する。お寿司が大好きで大学院のゼミが延長すると出前を取って大学院生と一緒に食べるという尾畑教授。今回は我々のために出前のお寿司を用意してくれた。

 尾畑教授は石川県の出身。大学教員だった父の影響もあり幼い頃から研究者志望だったが、当初は文学や外国語に興味があり、現役のときは東京外国語大学を受験したという。しかし届かず、浪人しても文学に関連する科目は思うように伸びなかった。「もしかしたら自分がやりたいと思っていることとは違うところに、面白いものがあるのではないか」と考え、一橋大学商学部に進学したそうだ。入学後も文学や外国語への興味が絶えることはなく、学部1年生の冬に体調を崩して入院した際には膨大な時間をドイツ語学習につぎ込み、ドイツ人の先生にドイツ語で非常に長文の手紙を送った。そして実力を認められ、授業に出席していないのにA評価を貰ったというエピソードを聞かせてくれた。

 専門の管理会計分野に出会ったのは学部2年生のとき。恩師である岡本清教授の会計学概論を履修し、管理会計分野に強く惹かれた。岡本教授に弟子入りすると決め、早期に研究者志望であると伝えて、鍛えてもらったそうだ。学部から院を通じての研究テーマは原価理論の学説研究。原価計算の基礎ともなる原価理論はドイツで発展したもので、そのためにもドイツ語の学習に更に力を入れたという。

 大学院を卒業した1987年に本学に専任講師として採用され、30年間にわたって教鞭を取ってきた。「勉強だけなら本があればできる」と考えているので、授業では「なぜ面白いか」を学生に伝えることを心掛けているが、なかなか難しいそうだ。最近ではSNSの発達によりTwitterなどで学生の生の声を聞くことができて参考になるという。大人数に対して一方的に教員が話す授業よりもゼミでの取り組みこそ学習効果が高いと信じており、学生にはゼミに注力してほしいそうだ。

 また、自分の下で博士号を取得した15人の学生のうち一橋の学部から来た人が3人しかいないことにも触れ、「一橋生は皆が学部卒で就職してしまうが、もっと大学院に来てほしい」と話した。

 大学生は就職後に比べたら自由な時間が沢山あるので、単位と関係なく勉強面で学生時代にしかできないことを頑張ってもらいたいそうだ。「自分は学生時代にこれをやったんだと思えるものを残してほしい」と語る。「卒業生が一橋での学生生活を振り返って『いい学生生活だった』と思ってほしいし、一橋にはそれを支援できるような大学であってほしい」