銀杏書房、74年の歴史に幕 学長らが感謝状贈呈

 2月28日に大学通りの洋書店、銀杏書房が閉店した。本学を支え続けた同書店へ、3月8日に学長らが感謝状を贈呈した。

2月28日に閉店した銀杏書房

 3月8日の感謝状贈呈式には、中野聡学長、蓼沼宏一教授、山内進名誉教授の歴代3学長らが参加した。一同が銀杏書房にそろうと、中野学長が感謝状を読み上げ、店主の川北光子さんに手渡した。また記念品の写真立てが大月康弘副学長から贈呈された。書房からは、クリストフ・ヴァイゲル『公益主要職業図絵』(1698年)が本学に寄贈された。
 銀杏書房は故高田和(かず)さんが開いた洋書店だ。終戦をきっかけに北海道北見市から東京へ移住した高田さんが、1947年に今の国立駅前郵便局がある角に店を構えた。洋書の流通量が不十分だった戦後、本学の図書館や研究者は書房を通して書籍を手に入れていた。
 1951年に本学へ入学した秌場(あきば)準一名誉教授は、初期の書房を知る一人だ。「占領統治下の国立において、自らを貴重な『文化的拠点』と主張しているように感じられた」と話す。まだ国立市が「国立町」だったころだ。「未舗装の大通りを暴走する軍用ジープや、酔っぱらった米兵の姿が日常だった」と名誉教授は振り返る。その中で、東南アジア風の影絵をショーウィンドウに飾る書房は印象的だった。
 中野学長も銀杏書房に通った研究者の一人だ。ロシア語を学んでいた学生時代は、書房でロシア語文献や絵本を購入した。教職員となってからは学生や院生に、書房で授業用の本を用意させたこともあるという。
 多くの本学関係者から惜しまれつつ閉店する銀杏書房。川北さんは閉店の理由を「ここ10年から15年の時代の変化」と話す。紙の本の需要低下を感じ、店をたたむことを決断した。蓼沼教授は「一橋大学の研究者と一緒に歩んできた書店だ。閉店はとても残念」と話した。

中野聡学長(写真手前)と店主の川北光子さん(写真奥)