9月10日、一橋大学の澁澤塾と東京工業大学のAttic Labが主催するビジネスコンテスト「THIS」が終了した。最終日には、集大成として、全9チームによるビジネスプランコンテスト発表会が行われた。総合優勝チームのメンバーに本コンテストの感想を聞いた。 

 本コンテストは、両大学の学生間交流を活発化させることを目的とし、8月16日から4週にわたり開催された。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全日程をオンラインで開催せざるを得なくなったものの、株式会社サイバーエージェントによる新規事業立案講座や、勉強会を開催するなど積極的にイベントを進行した。

 9月10日のビジネスプランコンテスト発表会では、全9チームがそれぞれのビジネスプランを発表した。審査員には中嶋淳氏(株式会社アーキタイプス)、金子大介氏(株式会社未来創造機構)、木村亮介氏(株式会社ライフタイムベンチャーズ)を迎えた。また、開会式には中野聡一橋本学学長と益一哉東京工業大学学長が、閉会式にはスポンサーの一人である滝久雄氏(株式会社ぐるなび創業者兼取締役会長)が出席し、それぞれ参加者へ激励の言葉を述べた

 総合優勝(正式名称は滝久雄賞)に輝いたのはチームBEAST。コロナ禍で大学生の貧困が問題視される中、経済的理由による教育格差を是正すべく、学内で完結する教科書のトレーディングシステムを考案した。学生間で取引が完結するため、郵送料などがかからず、メルカリなどの従来のシステムよりも安価に取引ができるのが特徴だ。審査員からは、大学生の窮乏という身近な問題に着目した点や、東工大生の技術力と一橋大生の社会への問題意識を組み合わせた点を評価する声が上がった。そのほか、音声感知システムを用いて高齢者の孤独死を防止する製品を考案したチームAkohoと、ニーズに合った商品やアクティビティの情報を提供し、ユーザーの日常生活を豊かにするアプリを提案したチームALL GREENSがそれぞれ審査員賞を受賞した。総合優勝のチームBEASTにはプロジェクト実行のための資金として賞金合計50万円が、ほか2チームには賞金10万円が贈呈された。

 総合優勝のチームBEASTのメンバーである櫻井拓真さん(社1)に、本コンテストの感想を聞いた。期間中最も苦労したのは、ビジネスプランのテーマを選定することであったという。食品ロスや少子高齢化など、様々な社会問題をテーマに、それを解決するようなプランを考案しようとしたものの、解決案が浮かばなかったり、すでに類似したビジネスが存在していて介入する余地がなかったりして、なかなかテーマが定まらなかった。櫻井さんは「ミーティングをするたびにこれまでの話し合いが白紙に戻ったので、焦りを感じて途中で投げ出したくなったこともありました。他のチームメンバーも同じことを感じていたようで、ミーティング中の雰囲気も暗い期間がありました」と、振り返る。しかし、こうした紆余曲折の果てに、「大学における、経済的理由による教育格差」という身近な問題に行き着き、これが審査員からの評価にもつながった。プロジェクトの今後について、櫻井さんは「実現については考慮すべき点が多く、困難ではあるが、何かしらの結果は残したい」と力強く答えてくれた。