新型コロナウイルス禍における学生の経済状況を心配する市民が5月、本学の中和寮に食料品を提供した。市民と寮のつながりが生まれた一方で、学生の経済状況に関する不確定な情報が流れていたことも明らかになった。
「新型コロナウイルス感染拡大によってバイトができなくなり、学生が経済的に困窮している」という噂を聞きつけた市民らが自主的に食料を集め、5月4日、5日、12日に寄付を行った。また同月31日には市民からの寄付金をもとに、旭通り商店街で使用できる1000円分のお弁当券40枚を配布した。
中心メンバーの一人、野道秀一さんは「困っている人に心を寄せる国立市民らしさを感じた」と話す。食料品の寄付に至ったきっかけは、知り合いの市民から「食事が十分にできていない学生がかなりいる」と聞いたことだ。自身の所属する市民サークルのメンバーなどに寄付を行う計画を話すと、わずか1週間で大量の食料品が野道さんのもとに届いた。12日には約30人の市民が集まり、100キロほどの米をはじめ、野菜や卵、調味料などを中和寮に届けたという。野道さんは「自分は家庭の経済状況から、昼に働いて得たお金で夜間大学に行った。そういう経験を思い出して、学生の厳しい状況は想像に余りあると感じた」と話す。今回の件をきっかけに、学生と市民の助け合いが活発化することを期待している。
中和寮生からは「食費が半分になった」「感染が不安な中、買い物に出かけずに済んだ」など喜びの声が聞かれた。一方で当時の寮長、君島朋幸さん(言社博2)は「嬉しい一方で、最初はなぜ食料が寄付されるのかわからず不思議だった」と話す。困惑の背景にあるのは、寮生の経済状況に関するデマだ。「バイトができず困っている」などの出所不明の情報が、SNSなどで市民の間に広まっていた。大学や中和寮執行部が公式の情報を出していないにも関わらず、誤った情報が市の福祉部まで届く事態となったという。寮の対応を非難する電話が、中和寮にかかってくることもあった。
「不安な情勢下で、当事者不在のまま今回のような支援の話を進めるのは危険だと感じた」と君島さんは話す。同時に「デマに関しては謝罪を受けたし、地域の方々との関係構築の足掛かりができた」と感謝を表した。しかし今回の食料運搬や仕分けは市民にも、新学期を控え多忙な中和寮執行部の学生にとっても負担が大きかったそうだ。今後は市民と寮生の双方にとって無理のない関係を模索していきたいという。