新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの学生が困窮している。本学でも、学生を取り巻く状況は深刻だ。この状況に対し、さまざまな取り組みが進められている。


 院生自治会の主導のもと、web上で新型コロナの影響に関するアンケート調査が二度にわたって行われた。
 4月はじめ、講義をすべてオンラインで実施すると発表された直後に1度目のアンケートでは、院生を中心に通信環境やプライバシー確保といったオンライン講義の環境整備の困難、経済的な困難や研究の支障といった声が多くあがった。2度目のアンケートでも、回答者の42%が収入の減少を訴えたほか、そのうちアルバイトが「ゼロ」あるいは「4分の3以下になった」との回答は全体の54%にも及ぶ。こうした状況のなか、4月29日より、授業料値上げを考える一橋大学有志の会(以下、有志の会)・院生自治会・教員有志により、オンライン署名サイト・Change.org上で署名運動が行われ、6月15日に学長、沼上副学長、学生委員会、総務課、学生支援課に対して提出された。

 こうした状況のなか、4月29日から、授業料値上げを考える一橋大学有志の会(以下、有志の会)・院生自治会・教員有志により、オンライン署名サイト・Change.org上で署名運動が行われた。
署名は、教員からFacebookを通じて有志の会に呼びかけがあり、それに院生自治会が協力する形でスタートされた。署名の主張は、オンライン化に伴う通信環境の調査・補助と、学費・寮費をはじめとする経済的負担減免の2本の柱からなる。加えて、感染拡大に伴う学業、研究遂行上の困難による休学を認めさせることも視野に入れている。

 署名関係者は、感染拡大が続き、学生に経済的な影響がある限り大学・国に対して声をあげていかなければならないと話す。今年9月の学長の交代とも結び付けながら寮費の値上げなど、今まで止まっていた問題を動かし、自治を作りあげる機会にすることを目指している。署名関係者は「今回の運動を機に、アンケートなどを通してまだ意見を言うべき人がいることがわかった。もっと色々な人が大学の現状に対して強い意識を持つきっかけになってほしい」と語った。
 
 署名にも関わった井上間従文准教授(言語社会研究科)にも取材した。
 井上准教授は大学の知的活動や勉強の時間がコモン(共有財、共通感覚などを意味する)の領域から収奪され、市場における利潤蓄積の道具とされて久しい、と指摘する。こうして大学が資本と市場のロジックに飲み込まれていく傾向を1990年代にカナダの比較文学者ビル・レディングスは「廃墟の中の大学」と呼んだが、昨今では「廃墟としての大学」とさえ言われていると述べる。だが知的活動は人間が共に行う行為である一方で、知を「共有する枠組み自体を批判的に思考する問い」でもあるという。そのうえで、井上准教授は、「知を「みんな」で取り返すべきだ」と述べ、幅広い層の人々が大学と国の両方に、共に学ぶために必要なインフラと資金を要求していくことが大事であると話した。
(井上氏とのインタビュー全文はこちらに掲載。)