コロナ禍、新入生の本音とは

 緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、未だ外出自粛が呼び掛けられる現在。本学も授業の全面オンライン化など、例年とは全く違う春を迎えた。こうした中、最も感染拡大の影響が色濃いのは、新生活とコロナ禍という二重の非日常を送る新入生だろう。4人の新入生に取材し、コロナ禍における新入生の本音に迫った。

〇混迷する大学の対応
 まず、新型コロナウイルスへの大学の対応を振り返る。
 3月23日、入学式の中止が発表された。一方同月26日時点では、一部の授業開始を4月20日に延期した上で映像配信とし、それ以外の授業は通常通り再開するとしていた。十分な換気をする、教員と学生間を1㍍以上空けるなど、具体的な対策も掲げられた。
 授業開始延期および授業の全面オンライン化が発表されたのは、4日後の30日。同日、大学主催の新入生向け行事が軒並み延期、中止、資料公開または映像配信となった。
 さらに4月2日付で、インターネット環境およびパソコンの準備について、詳細が掲示された。授業開始日の5月7日まで、機材などの準備に充てられたのは約1か月ということになる。
 二転三転した大学の対応。多くの新入生が、もっと早く決定して欲しかったと語る。岡村悠凱さん(法1)は「(授業延期発表が)他大学と比べても遅かったのではと思います」と話した。古賀君香さん(社1)は、履修や新歓行事に関する大学の書類が、結局役に立たなかったという。送られてきた書類は新型コロナウイルスの流行が本格化する前のものだったため、最新情報を大学ホームページで再確認しなければならなかった。「その分二度手間でしかなかった」

〇難化する情報収集
 例年に比べ難しくなっているのが、大学生活に向けた情報収集だ。
 本学では新入生の入学前から、ガイダンスや生協説明会などのイベントが、立て続けに中止された。大学側からは、YouTubeに投稿されたガイダンス動画や、郵送資料で説明があったという。
 毎年新入生を苦しめる履修については、SNSを活用して情報を補ったという人が多かった。しかし、情報の入手手段が限られるため、SNSを普段使わない人には負担が大きいという声もあった。

〇一長一短のオンライン化
 最大の変化は、授業や新歓のオンライン化だ。
 「精神的に疲れる」とこぼしたのはKさん(社1)。友人を作りにくく、授業などで分からないことがあっても、気軽に頼れる人がいない。「対面なら休み時間に課題の有無を確認し合えるが、オンラインだとそれができない」。特に、課題の多いPACEなどの授業で、不便を感じているという。manabaやCELSの使用機会が増えたことも、それらの操作に不慣れな新入生には不安点となっている。岡村さんは「パソコンを使った試験の勝手が全く分からないため、manaba上で予定されている試験がとても不安です」と話す。
 他方、全員がメリットとして挙げていたのが、時間的・空間的な利便性だ。「1限の授業がオンデマンドだと、好きな時に受けられて、寝坊する心配がないので嬉しいです」(古賀さん)。「(神奈川県の実家から)片道2時間かけて通うのを考えると、オンライン授業はありがたい」(Kさん)。
 オンライン新歓については、新入生間で満足度に差が現れているようだ。岡村さんは、SNSで情報を得たり、履修相談に乗ってもらったりして、特にサークル選びには困らなかったという。一方、大宮千和さん(社1)は、オンライン新歓に不満を感じている。サークルの普段の雰囲気が分からない上、そもそも気になるサークルがオンライン新歓に積極的ではないことも。「情報が少ないのは大きなデメリットだと思います」。情報格差の広がりを心配する声もある。「SNSを使わない人への配慮もしてほしい」(Kさん)。

〇影響は引っ越しにも
 引っ越しに影響が出た新入生もいる。岡村さんは、下宿先への引っ越しで手間取ったという。3月末に新居に荷物を運び、4月初めまで暮らしていたが、新型コロナウイルスの流行に不安を感じて一旦実家に戻った。「もし感染しても誰も助けてくれず、孤独死するのではと不安になりました」。授業のオンライン化が決まっても、冷蔵庫などの大型家電を運び出す手間を考えて、下宿先を解約しなかった。2ヵ月の間実家で授業を受け、今は下宿先に戻れたそうだ。生活習慣の改善など、一人暮らしには良いこともあった。しかしネット環境の不安定さに、オンライン化が進む今ならではの不便さを感じているという。また「本当に人と話さないのでさみしい」と、コロナ禍ゆえの悩みも漏らした。

〇取材を通じて
 新入生は主に大きく2つの事柄について不安を感じている。
 やはり、人とのつながりの薄さが大きな不安であるようだ。「人と関わる機会が少ないのはやっぱりつらいです」(大宮さん)。「毎週末にクラスでZoom人狼をするのですが、最近は参加する面々が固定されてきて、実際に会う時にクラス内が分断されないか心配です」(古賀さん)。
 今後の見通しがつかないことも、新入生に大きな不安を与えている。「長期アルバイトがしにくい」(岡村さん)。「1年次に留学を希望していたが、行けなくなった。予定が狂い、今後の大学生活の展望も見えていない」(Kさん)。
 緊急事態宣言解除後に感染者が増え続けるなど、新型コロナウイルスをめぐる状況は先行きが見えない状態だ。本学でも夏季休暇以降の対応次第で、こうした新入生の不安は今しばらく続く。