本学は5月1日、2020年度夏の海外留学プログラムの中止を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大をうけ、派遣留学生の安全と健康を確保することが難しいと判断した。派遣留学が中止されたプログラムは一橋大学海外派遣留学制度、グローバルリーダー育成海外留学制度、海外語学研修(夏季)、ドイツ語短期海外語学研修(オンラインで実施予定)、サマースクール等留学制度、異文化交流研修。冬の海外留学プログラムの実施可否については検討中としている。
また海外派遣留学を担当する教務課教務第五係(以下、教務課)は3月頃、昨年度の留学プログラムに参加していた学生に帰国命令を下していた。対象者は、外務省海外安全ホームページで「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」以上が発令された国や地域に派遣されていた学生。本紙は学生5人に話を聞いた。
〇今年度夏出発の派遣留学中止決定
小川大志さん(経3)は、9月から予定していたマンチェスター大学への留学の中止を、5月1日に教務課から送られてきたメールで知った。小川さんは1年生のころ参加した海外語学研修に刺激を受けて長期留学を志望。以後、学内選考の対象となるGPAや語学試験のスコア向上に取り組んできた。苦手な英語の語学試験は4回受験し総額10万円を費やしたという。「労力をかけて準備してきたことだったのでショックは大きかった」と漏らした。
〇留学中の学生に帰国命令
昨年8月からミネソタ大学カールソンスクールに留学していた吉井里菜さん(経4)は、教務課からの帰国命令をうけ予定より2カ月ほど早い3月下旬に緊急帰国した。3月中旬ごろから留学先の授業はすべてオンラインに切り替わり、図書館などの大学施設は軒並み閉鎖したため「アメリカに居続ける理由がなくなった」という。帰国前は「人との接触を避けるために部屋に閉じこもっていることが多く、不安になるときもありました」と語った。23日に実家に帰国してからは、春学期が終わる5月中旬まで留学先のオンライン授業を受講して過ごしたという。「授業は最後まで受けられましたし、アメリカにいたからこそコロナウイルスへの対策やオンライン授業について日本との違いを感じられたのはいい経験だと感じています」と前向きに振り返った。
一方で、教務課と交渉して留学を継続する学生もいる。昨年9月から今年6月末まで国立台湾大学で台湾のビジネスや文化を学んでいる岩崎佑紀さん(商4)はその1人だ。3月26日に教務課から帰国命令が下されたが、岩崎さんは台湾に滞在を続けたいと申し出た。台湾政府が実施していた防疫対策のほうが優秀であることから、帰国を延期するほうが安全だと訴えたという。2週間の交渉の末、教務課は4月3日、岩崎さんとの連絡手段の確保や在留届の更新などを条件に、例外的に滞在を認めた。5月からは課外活動や旅行が解禁され、中旬には感染拡大前と同じ生活を送ることができている。
○将来の留学に不安残る
新型コロナウイルスの感染拡大は今後留学を検討している学生に不安を与えている。ヨーロッパへの長期留学を予定する中間香伶さん(社2)は試験会場の閉鎖に伴い、語学試験の自宅受験を考えざるを得なくなった。中間さんは「(自宅受験の)環境をきちんと整えられるのか、集中して十分に力を発揮できるのか、というのが大きな不安です」と苦悩する。
新入生の男子学生(法1)は3年次にヨーロッパや東南アジアへの留学を模索している。しかし入学後まだ一度も大学に登校できておらず留学関連の情報収集に苦戦している。「学内に知り合いを作り、情報を集めたい」と2年後を見据えた。