本紙記者の取材に応じてくれた松本大臣

 今年の10月4日、 高市早苗氏が自民党総裁に選出され、同21日に高市内閣が発足した。これを受け本紙は、国立市を含む選挙区である東京19区の衆議院議員であり、高市内閣で文部科学大臣として初の入閣を果たした松本洋平氏にインタビューを行った。
 松本大臣は、政治家としての原点や人口減少社会となる日本における成長実現への意志、これからの文部科学行政への展望について語った。   
 
 ――まず、 政治家松本洋平さんご自身 について質問させていただきます。松本大臣が政治家を志したきっかけを教えてください。
 私が1996(平成8)年に大学を卒業して銀行員として働き始めてからすぐに、経済が厳しくなった時期がありました。当時は 銀行が貸し渋りや貸し剥がしをして、貸している債権を回収しに動きました。それによって 、自分が支援している中小企業が苦しんでいる姿を見ておかしいと思いました。その後に政治が変わることで助かった企業をいくつも見て、政治がいかに実生活に大きな影響を及ぼすかを実感したのです。これが、私が政治の世界を志したきっかけです。
 ただ最初は、親戚に政治家がいるわけでもなく、政界とのつながりがなかったので、 縁を作るために政治家の事務所に突撃訪問を行ったこともありました。
 問題意識を抱いていることはもう一つあります。私は1973(昭和48)年生まれなのですが、この年に生まれた人は第二次ベビーブームの中でも特に数が多い、ボリュームゾーンともいえる世代です。そのため、 私たちの世代が高齢者になると、労働力や社会保障の面で一気に経済が苦しくなってしまうという宿命を抱えています。
 そこで、私たちの世代がやるべきことが2つあると考えています。1つ目は、今の生産年齢人口の ボリュームゾーンとして、人口減少を乗り越えられるよう経済や社会を改革していく主人公になること。そして、私たちが高齢者になったときには、若い世代に負担を押し付けるのではなく、若者たちに夢と希望をもってもらえるようにしていくことです。そのために、私は政治家として改革 を実行し、所得を増やすことで、経済と社会保障の好循環を作り、人口減少を乗り越えられる社会にしていきたいと考えています。

 ――松本大臣は、24年、25年の自民党総裁選では「コバホーク」という愛称で呼ばれている 小林鷹之政務調査会長の陣営で中心的な役割を担われていましたが、なぜ小林氏を支援したのでしょうか。
 小林政調会長は政治家としては私の後輩にあたるのですが、個人的にとても仲が良くて、元々相談にも乗ってあげていました。それで、昨年の総裁選のときには「ぜひ 応援してほしい」と要望を受けました。彼は政策面で 優れているし、人柄も尊敬できる部分があるので、快諾して陣営に入りました 。また、小林政調会長や若年の仲間たちからの要望により、陣営のリーダーを務めることになりました。

 ―― 次に、高市内閣のメンバーとしての松本大臣というテーマに移らせていただきます。高市内閣での抱負をお聞かせください 。 
 高市内閣の大きな方針として、今行わなければならない投資をためらわずに行うことで 、この国の成長を実現していこうという目標があります。高市首相が掲げている「責任ある積極財政」も、本質的にはそういうことだと思います。このまま人口が減少していけば、経済活動も社会も縮小してしまうでしょう。そうではなくて、将来への投資を増やすことでこれからの日本を豊かにしていき「世界で必要とされる日本」を作っていくというのが、高市内閣の姿勢だと思っています。これは私の政治信条とも一致していますので、精一杯高市内閣を支えていきたいです。

 ―― では次に、文部科学大臣としてのテーマでいくつか質問をさせていただきます。国立市には本学を中心とする文教都市としての側面があります。松本大臣は国立市を含む東京19区を選挙区とされていますが、こうした大学や都市に関するビジョンはありますか。
 文部科学行政、とりわけ教育行政の大きな特徴として、実際に政策を国民に届けるのは自治体や教育機関であることが多いということがあります。だからこそ、学校や教育者と連携しながら、どのような教育を提供していかなければならないかを考える必要があります。一橋の学生さんに意見を聞かせてもらう機会も多いので、そうした皆さんの思いを受け止めた文部科学行政をやっていきたいです。
 もう一つ重要な観点として、教育というと基本的には子どものためのものと捉えられがちですが、これからは大人が学び直していくための教育も重要になってくると思っています。大人になってさまざまな経験をしたからこそ、新たな関心が湧くこともありますし、新しいスキルを伸ばしていくことも重要ですから。
 国立市も、文教都市というと高校生や大学生のような若年層を主役とする町というイメージが強いです。しかし、従来のそういった側面を伸ばしつつ、多様な経験をしたい人たちに幅広く学びの場を提供していくことで 、文教都市としての深みが出るのではないかと考えています。

 ――11月13日には濵﨑真也国立市長とも意見交換を行ったとのことですが、実は本紙では過去に濵﨑市長にも取材を行ったことがあり ます。その際には本学の強みでもあるスタートアップを通じて国立市を発展させていきたいという意見をいただきました。
 それは本当におっしゃる通りで、産学連携の推進に向けての取り組みが進められており、国としても大学発スタートアップを促していきたいという方針です。そういう意味では一橋の皆さんにはぜひとも頑張っていただきたいですし、我々もそうした動きをサポートしていきます。大学が教育の場だけでなく、学生と企業をつなぐハブとしての役割も持てるようにしていけると良いかもしれないですね。

 ――私は教育系の授業や教職関連の授業を多く履修していて、特に教育行政に関心があります。そこで、松本大臣に教職員の待遇改善を含めた教育環境の整備の方針について伺いたいです。
 教員の働き方改革は喫緊の課題だと認識しています。学生さんの中で、将来就きたい職業の1位が教員だという民間企業の調査もあると聞いたことがあります。若い人たちが、それだけ教員に関心を向けているということです。しかし、実際に教員採用試験を受けてくれる人は 少ないというのが現状です。そうした課題に対応することが重要だと考えています。
 教員に関心は向いているけれど実際になる人は少ない、という状況の原因として挙げられるのは、やはり働き方の問題です。そうした声は現場からも受けていますし、中教審(※1)からも声明をいただいています。これを受けて文部科学省としては、今年の6月に給特法を改正したうえで、そのほかにもさまざまな法律を改正して教員の待遇改善に取り組んでいます。
 ただ、そうした 動きはやはりまだ十分とはいえないでしょう。待遇面の改善と負担軽減という両輪で教員の働き方改革を進めていくことが重要だと考えています。デジタル技術の活用による業務の効率化もそうですし、何より子どもたちと向き合える時間を確保できるようにしていかなければいけません。こうした働き方改革によって「教員になりたい!」と思ってくれる人を増やしていくことが大事です。忘れてはならないのは、これらの改革はすべて最終的には子どもたちのために行うということです。

 ――教職課程を履修していく中で、教員の大変なポイントとして、その職務が多岐にわたるということがあると感じています。部活動や保護者への対応もそうですし、多様な家庭環境や属性を持つ子どもたちのニーズに応えていく必要があることが負担になっていると感じます。
 不登校などの課題を抱える子どもたちのために、国が資金をしっかりと投入してスクールカウンセラー等の制度を整えていくことによって、教員がすべて対応するのではなく、プロの人たちを頼れるようなしくみを作っていくべきだと感じています。また、部活動の地域移行を進めることで、教職員の負担の軽減を図ることも重要です。それぞれの教員が働きがいをもって働くことが重要だと考えています。
 学校の先生は「子どもを育てる」という崇高な仕事に携わっていると思います。社会や経済の全ての基本は「人」ですから。「人づくり」こそが社会を支える基本なので、そうした仕事に携わっている教員の皆さんにとって働きがいのある社会を作っていきたいと考えています。

 ――わが国の基礎研究への投資額がアメリカや中国といった主要国に比べると圧倒的に低いという現状があり、弊部の部員にも懸念を抱いている人がいます。日本の基礎研究分野の研究 が遅れている現状の理由や解決策について、松本大臣の見解をお聞かせ願います。
 今年、坂口教授(※2)と北川教授(※3)がそれぞれノーベル賞を受賞しました。お二人が基礎研究の重要性を強く訴えていたのが印象に残っています。
 日本の研究に対する考え方として、不況の中で「この研究が自分たちの暮らしにどう役立つかわからない」「自分たちの暮らしにダイレクトに役立つことが見えている分野に資金を投入しよう」という、いわゆる「選択と集中」の時代があったことは否めません。
 しかし、十分な基礎研究を抜きにして競争的な分野に注力してもうまくはいきませんし、基礎研究という一見どう役立つかわからないものにも資金を十分に投入して研究を深めれば、将来的に「これにも使えるんじゃないか」とさまざまなものに応用していくことができるでしょう。うまくいった分野は日本の強みにすることもできるかもしれません。だからこそ、基礎研究を充実させていくことが重要だと理解しています。
 研究そのものと若手の研究者の育成の両方に資金を投入できるよう予算を確保していきたいです。研究をしていくにあたって躊躇や不安が生じないように環境を整備し、基礎研究の厚みや範囲を充実させていけるよう取り組んでいるところです。

 ――現在の日本の財政状況では、教育や研究の予算を拡充していくことが可能なのでしょうか。
 高市内閣の目標である成長を実現する上で最も重要になるのが、教育や科学技術などの文部科学分野です。予算、政策、法律といった各方面で実現していけるよう努力していきます。

 ――本日は貴重なお時間をいただき ありがとうございました。国立市から出た大臣に お話を伺うことができて光栄です。

(注)
※1中教審 :中央教育審議会。文部科学省に設置された審議会。教育の振興に関する重要事項について審議し、文部科学大臣への意見具申などを行う。教育関係者や民間・マスコミ関係者などで構成される。

※2坂口教授:坂口志文(さかぐち・しもん、1951~)。大阪大栄誉教授。過剰な免疫反応を抑える制御性T細胞に関する研究で、2025年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。

※3北川教授:北川進(きたがわ・すすむ、1951~)。京都大理事・副学長。多孔性金属錯体の開発により、2025年にノーベル化学賞を受賞した。