前回は、「キャリア戦略」の設計方法を紹介しました。
「キャリア戦略」を設計し、志望業界、企業を決め、大学2~3年になると、いよいよ就職活動が始まります。
希望の仕事に就ければ、楽しく働くことができ、高いスキルを培える。それによって収入に恵まれ、次も良いキャリアを築けるーーこのように、就活の結果は人生にさまざまな影響を及ぼします。
しかし、就活の選考には、個人面接やグループ面接など、筆記中心の大学入試とは異なる内用が多く含まれます。そのため学生の皆さんからは、「口下手だから自信がない」「社会人と話すのは緊張する」などの悩みをよく聞きます。そこで今回は、就活における選考対策のポイントをご紹介していきます。
〈著者プロフィール〉
渡辺 秀和(わたなべ・ひでかず)
株式会社コンコードエグゼクティブグループCEO
一橋大学商学部卒業。大手シンクタンクなどを経て、2008年にコンコードを設立。マッキンゼーやBCGなどのコンサル、投資銀行、外資系・スタートアップ経営幹部などへの転職支援に高い実績を持つ。2010年、「日本ヘッドハンター大賞」初代MVPを受賞。2017年、東京大学初の本格的なキャリアデザインの授業にてコースディレクターを務め、著書『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社)は教科書に選定された。2025年、一橋大学客員教授に就任し、秋冬学期にて「キャリアマネジメント」の授業を開講。
一流の社会人は準備をする
「採用企業は、経歴や人物を見て、適正に評価してくれるはずだ」と考えている人を時々見かけますが、果たしてそうでしょうか。
就活や転職活動では、準備や対策がとても大切です。それを理解していないと、素晴らしい経歴や実績がありながら、選考に落ち続けることもあり得ます。一方、準備や練習をすれば、面接も上手に行えるようになるのです。
実は、官庁や一流企業で活躍するビジネスリーダーも、転職をする際には応募書類を練り込み、面接の準備もしています。驚くかもしれませんが、考えてみれば、ビジネスの場において準備や練習をするのは当たり前のことです。
自社製品を売る営業スタッフも、銀行から資金を借りる経営者も、魅力をわかりやすく伝える資料を練り込み、想定問題を用意します。本番に備えて、実際に話す練習もするでしょう。
図表①
むしろ、「準備」をできない人は、一流の社会人とは見なされません。相手の気持ちを想像したうえで、わかりやすく伝える努力や工夫をできる人が、企業からは求められているのです。
一緒に働く仲間に相応しいか
極端に言えば、採用企業は「応募者が一緒に働く仲間に相応しいのか」を確認しています。
当然、頭がよいというだけでなく、仕事への情熱、他者への思いやり、自己管理能力、素直に受け止める力、成長意欲などといった要素が、総合的に判断されることになります。
たとえば、あなたがサッカーのチームをつくるとしましょう。応募者は、初心者が中心です。身体能力の高い人に入ってもらいたいものの、サッカーへの意欲が高い人や、チームプレイができる人、素直に学んでくれる人、粘り強く頑張れる人などに参加してほしいと思うはずです。
新卒採用も同様です。能力面のみならず人物面も含め、一緒に働く仲間に相応しいかが総合的に判断されます。ましてや会社で働く機関は、とても長いもの。現時点での能力以上に、伸びしろが重要になるのです。このような前提を踏まえて、選考ステップごとに対策のポイントを解説していきます。
書類選考の対策
選考における最初の関門は、書類選考です。経歴や実績が同じでも、書類の書き方で合否が分かれてしまうのが実態です。それほど重要でありながら、誤解の多いステップでもあります。
書類選考における提出書類は、履歴書やエントリーシート(ES)が一般的です。書類に描かれた志望理由や自己PRをもとに、応募者の熱意や人柄、適性などが確認されます。
問題解決能力、コミュニケーション能力、専門知識……何をアピールすべきかは、採用企業の仕事内容によって異なります。つまり、ESには「こう書けばよい」という正解があるわけではありません。まずは企業が求めている能力や適性を理解したうえで、作成することが大切なのです。
筆記試験の対策
続いての関門は筆記試験です。就職活動における能力適性試験は、中学受験の算数や国語に近い問題が出題されます。試験本番の制限時間がある中で、久しぶりに見るそれらの問題を解こうとすると、予想以上に解けずに焦る方も多いようです。
また、人気企業には、試験に強い名門大学の学生が殺到します。そのような筆記試験に丸腰で向かうのは危険です。本来の実力を発揮できるよう、練習問題で慣れておく必要があります。少しやれば、すぐにカンを取り戻せるでしょう。対策本をもとに、手を動かして練習することをおすすめします。
面接の対策
最後の関門は、面接です。人物・実績・志望理由などを確認する「個人面接」が中心となります。中には、特定のテーマに関して面接官と議論するケース面接のほか、グループディスカッションや集団面接が行われる企業もあります。
個人面接の主な内容は、「志望理由」と「自己PR」です。仕事への情熱、自己管理能力、他者への思いやり、成長意欲等々、一緒に働く仲間に相応しいか否かが多角的にチェックされます。
志望理由として、自分の想いを伝えることはもちろん大切です。しかし、ビジネススキルを持たない新卒学生を粘り強く育ててくれる、採用企業の気持ちをよく考える事も必要です。面接官にとって納得感のあるロジックで、ストーリーを組み立てましょう。採用企業で取り組む「仕事内容」への熱い想いが鍵となるはずです。
自己PRは、企業がどのような能力・適性を持つ人を採用したいのかを理解したうえで、伝えることが大切です。その能力・適性があることを示すエピソードも準備しておきましょう。
志望理由の説明ひとつをとっても、準備や練習なしに臨むのは難しいものです。壮大な夢を熱く語るだけでは「目の前の仕事にしっかり打ち込んでくれるのかな?」と不安に思われかねません。
また、話し方や表情が受け手に与えるインパクトを意識してブラッシュアップしておくことも、非常に大事です。面接練習の様子を録画して確認することも役立ちます。「無表情でリアクションが薄いので、相手が話しづらそうだな」「うん。うん。と相づちを打っているので、目上の人に対して失礼だな」など、マイナスな印象を与えるクセが見つかることも珍しくありません。
図表②
長期インターンのすすめ
就活を見据えた際に、長期インターンへの参加は、とても役立つ経験となります。
長期インターンでは、社会人1~2年目に教わるような仕事を先取りできます。会議の議事録の取り方、データ分析や資料作成の手法、効果的なプレゼンテーションの方法など、ベーシックな「ビジネススキル」を習得できます。
また、上司への報告や相談の仕方、顧客とのコミュニケーションなど、社会で人と一緒に働く際に欠かせない「協働するスキル」を学べることも、貴重な経験となるでしょう。
これらの経験と実績は、就活で大きな武器となります。新人の育成コストや負荷を考えれば、「社会人の基礎スキルを持つ学生を優先的に採りたい」と企業が考えるのは当然のことです。
さらに、就活では、面接で社会人と話をするだけでも多くの学生が緊張するはずです。長期インターンを通じて社会人と話し慣れていることも、就活ではアドバンテージとなります。
このようなスキルが学生時代に身につけば、就職先でも早い段階から活躍しやすくなります。それによって、顧客から喜ばれたり、上司から高い評価を得られたりすれば、自分のやる気もより高まるでしょう。そして、ますます仕事に打ち込むのが楽しくなり、さらに成果も上がるという、良い循環に入っていくことができるのです。
合否にとらわれすぎない
最後にお伝えしたいことがあります。それは、「就活の合否結果にとらわれ過ぎない」こと。
目指す将来像に至る道は、無数ともいえるほどあります。第1志望や第2志望の企業に入れなかったとしても、長い目で見れば、人生に大きな影響がないことが大半でしょう。
もし、第1志望から内定を得られたのなら、とても喜ばしいことです。しかし、社会人としてようやくスタートラインに立っただけなのです。
より良い社会人スタートを切れるよう、卒業までの時間を大切に過ごし、社会に出る準備をしましょう。就職活動は、社会人としての「成長の好機」です。結果にとらわれすぎず、学びのプロセスを大切にしていただけると幸いです。
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次回は最終回、「自分でキャリアをデザインする時代」です。ぜひ、お読みください。