「高校時代は理系だった」と語る一橋生は意外と多い。数学と英語のみの経済学部の後期試験を経て入学した者や、受験の際に文転した者など、その背景は様々だ。
元理系の新入生の中には、授業自体に興味を持つことができるのか、また授業についていけるのか不安な人も多いだろう。元理系の一橋生は、どのように一橋で学んでいくのだろうか。今回は2つの形を紹介する。
宮田将季さん(経3)は高校時代に天文学に惹かれ、東大理科一類を目指したが不合格。学費の面を考え、一橋に進学した。天文学への興味は未だあるものの「経済は人間の世界を分析するもの。天文学は物理的に世界を分析するものだから、被るところがあるはず」。そう考えることで納得し、経済学に取り組んでいるそうだ。現在は経済学をより深く学ぶため、GLPに参加している。
「経済の流れを見ていくことが面白い」と話す森田朱音さん(経3)も元理系の一橋生だ。一度は四大学連合を利用し、東工大へ行くことも考えたそうだが「経済と理系分野の両方を少しずつ学んで中途半端になるよりも経済を極めたいと思い、参加しなかった」と話す。
二人に共通するのは、早い段階から経済学そのものに興味を持ち、なじむことができたという点だろう。一方で学部科目に興味を持つことができなかったため、得意な数学を活かす道を選ぶ一橋生もいる。
石村遼汰さん(経3)は「もともと勉強することに対するモチベーションが低いことに加え、経済学に興味がないことが災いした」と語る。自分の得意な数学を使うだろうと経済学部に入学したが、実際の授業では数学を使う以前に、言葉の意味が分からず苦労した。「授業にもあまり出席せず、他大の理系学部のレジュメを眺めていた」という。心境の変化が起こったのは1年生の冬学期。「自分の大学生活はこのままの調子で進んでいくのか」と漠然とした焦りを感じた。それ以来、得意な数学を活かすことのできる計量学系統の授業を探し始めたそうだ。取材を行ったのは、もうすぐゼミ選考という時期。石村さんは計量学が学べるところを探している最中だ。
三輪赳央さん(平29商)も、一橋で数学を活かしていく道を選んだ一人だ。浪人時代に文転し、一橋に入ったものの、あまり商学部科目に魅力を感じなかったという。そのため、自分の数学好きを活かすことのできる小林健太ゼミに入ったそうだ。ゼミでは確率統計を学び、春からはアクチュアリーとして保険会社で働く。
石村さん、三輪さんのように数学を利用して、社会科学に適応していく道だけではなく、数学を純粋に研究することも一橋では可能だ。増井亨さん(経4)は「数学に関することならなんでもできる」ことに惹かれ、中山ゼミに入ったという。ゼミで主に扱うのは純粋数学。数学書を1年間輪読したのちに、各々のテーマの研究を行う。「高校時代に文転し、社会学部に入るものの想像とのギャップを感じて、数学を活用できる経済学部に」という複雑な経緯をたどった増井さん。「いろいろあったが、今自分の興味のあることができて嬉しい」と話す。
元理系ということは、有利にも不利にも働く。数学が得意ということが、大きなアドバンテージになる一方で、文系的な知識がないことが妨げになることもある。それぞれの要素をどう利用していくか、どう乗り越えていくかは人それぞれだ。しかし、一橋では必ずしも「社会科学だけを学ばなければいけない」というわけではない。石村さんや三輪さんのように、数学を通して社会科学を学ぶことも、増井さんのように、ゼミで数学を専門的に学ぶことも可能だ。その他にも、環境分野を学ぶことのできる大瀧友里奈ゼミ、天文学を学ぶことのできる大坪俊通ゼミなどの場もある。文系の大学といえども、幅広い分野を学ぶことのできる環境は、様々な一橋生への助けになるだろう。
一橋大学の2大メディア系サークル、HASCと一橋新聞のコラボ企画。全3回でお送りします。HASCと一橋新聞の記者が一つのテーマを、違った視点から記事にしていきます。今月のテーマは「一橋と理系」。メディア系サークルに興味のある新入生必見です。ツイッター上では、それぞれの記事のリツイート数で勝負中!
今月のHASCの記事はこちら:問い. 不等式「HASC>新聞部」を証明せよ。