4月1日、本学と株式会社帝国データバンク(TDB)の連携協定と共同研究契約による研究センターが、経済学研究科内に設立された。社会科学系の大学とTDBの、研究における本格的な連携は初の試みだ。
 TDBは日本中のおよそ100万社のデータを所有。従来の公開された財務情報を用いた分析より、精度の高いものが可能となる。分析結果は経営、政治の分野に応用される。


 今回の連携では、TDBのデータを用いて経済学の視点から実証的な研究を行う。経営戦略や政策の立案、地方創生に活用することが目的だ。共同研究センター長を務める、経済学研究科長の岡室博之教授は「経験と勘に基づいた旧来の政策立案でなく、データを利用して証拠に基づいた立案をすることが世界的な潮流になっている」と話した。

 これまでTDBは東京工業大学など自然科学系の大学・学部と連携。データサイエンス等の観点から日本企業を分析してきた。それを踏まえて、岡室教授は「本学との連携では、社会科学、特に経済学の観点から分析することで、より直接的に経営戦略や経済政策の設計に貢献することが期待されている」と述べた。
 研究の成果は、まずセンターのウェブサイトに「ディスカッション・ペーパー」として公開され、国内外の学会や学術誌で発表される。その後、内容をわかりやすくした形で地方の役所など一般向けにも公開される見込み。「研究に精通していない人々への発信にも重きを置いていきたい」と岡室教授は話す。

 また、ゼミの指導教員経由で規約に同意すれば、学生の卒業論文・修士論文にもデータが提供される可能性はあるという。ただし、データの利用には複雑なプログラミングが必要となる。加えて、漏洩を防ぐため、実際にデータにアクセスできるのは、共同研究に参加するTDB社員や研究補助員だ。学生の多様なニーズに個別に対応する体制はまだ整っていない。

(株)帝国データバンク
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