ミスコンを考える

 一橋大学では今年からミスコンテストが復活する。運営団体は本学公認サークルのC&Aだ。すでに投票も始まっており、12月14日に結果が発表される。

 ミスコンは主にジェンダーの観点からの批判が大きい。特に本学は戸籍上男性である学生がエントリーしたことに伴う騒動でミスコンが廃止になったという過去を持っているからだ。

 ミスコンに関わる人々はミスコンに対してどのように向き合っているのか。また、ミスコンの問題とは何なのか。C&A代表、本学のジェンダー研究者、ミスコンファイナリストにそれぞれインタビューを行った。

C&A代表 川平健登さん(商2)

―なぜミスコンを開催するのですか?

 特に地方部において、一橋の知名度を上げるためですね。ミスコンは大学の認知度を広げるのに最も手っ取り早い方法だと思います。それと、「一橋は最近落ち目だ」と石原慎太郎は言ってるんですけど、それを見返してやりたいという気持ちもあるんです。

―ミスコンには批判も多いですが

 過去に一橋でミスコンが廃止になったことは知っています。そのためミスキャンパス一橋は容姿が一定の水準以上であれば、男性も女性もエントリーできるようにしていくつもりです。また、容姿だけではなくパフォーマンスも見てもらえるようにしようと考えています。
ミスコンには確かにリスクがあるんですが、一度始めた以上、継続して行っていく予定です。

柘植道子特任准教授

―ミスコンについて、ジェンダーの視点からどう思われますか?

 ミスコンは「女性ならばこうあるべき」という価値基準を作るものです。その価値基準に沿っているかどうかが、その人らしさよりも大切になってしまう。「一橋らしい価値」を持っているだけではだめだということにもなってしまいます。その上、性的少数者や障がい者も傷つけることになります。

 「ミスコンを一橋のPRに使う」そうですが、そもそも一橋がミスコンで有名になる意味はあるんでしょうか。

―C&Aは容姿以外の能力も考慮すると言っていますが

 能力を重視する場で、容姿と能力の両方をほめると、女性の自己肯定感が低下するという研究結果があります。「能力も重視する」というのではなく、完全に能力だけを競うイベントにしたほうが良いんじゃないでしょうか。

―ミスコンに出場する女性に求めることは何ですか?

 美をアイデンティティにしたり、マスメディアを利用したりするために、ミスコンに出場することは良いと思います。しかし周りが押し付ける理想像に合わせ続けることで、操り人形のようにはならないでほしい。

―ミスコン開催の責任はどこにあると思いますか?

 ミスコンの社会問題性、メッセージ性に人々が気づいていないことにあると思います。

ミスコンファイナリスト

―ミスコンに出場した理由は何ですか?

 人数が足りないといわれたからです。ミスコンを一橋のPRに使うという目的にはそれなりに共感したんですが「何があってもC&Aの責任」というのが一番の出場の決め手です。

―ミスコンの問題点は何だと思いますか?

 1つは個人の名前や顔が流出していき、だれに見られているのかわからない状態になってしまうこと。もう1つは、ミスコンは男性の理想の女性像を売るイベントなので、時代の流れに逆行しているという側面があることです。

―性的少数者への配慮を呼び掛けるツイートをミスコンのアカウントでしていましたが

 昔から性的少数者の抱える問題について関心があったからです。将来は性的少数者に関われる仕事を考えています。

 ミスコンの持つ性的少数者への差別的な文脈は、出場時は意識していませんでした。しかしその問題を知っていたとしても、今の状態なら自分は出場していたと思います。出場することでマスメディアを利用して性的少数者に関する情報を広く発信できることを知ったからです。

―今後もそのような活動を続けていきますか?

 そのつもりです。現在は性的少数者の友人たちにどんな内容をツイートしてほしいか意見を募っている最中です。


 今回の一連のインタビューを通して私は、現状のミスコンは少なくとも改善すべきだと感じた。今回インタビューした全員がミスコンというイベントの社会的メッセージ性や課題を程度の差はあれ、認識している。運営側である川平さんやファイナリストでさえも「ミスコンはリスクがある」「友人がミスコンに出場すると言ったら自分は反対する」などと語る中で、現状のままのミスコンを開催する意味は薄い。

 広く注目を集めることができ、それに関わる人々が自由に意見表明をすることが可能な新たな方向性の模索が必要なのではないだろうか。