【報道】学内規則改正

■学校教育法・国立大学法人法の改正に対応

 先月1日付で、50件以上の学内規則が改正された。学長や副学長など大学執行部は、昨年改正され同日から施行されている学校教育法・国立大学法人法に対応する見直しとしている。改正内容や改正方法をめぐり、教員からは疑問の声も聞かれた。

 改正された規則は、学長選考規則など大学のあり方に関わる規則から、休学や懲戒など学生生活に関わる規則まで、多岐にわたる。多くは学長・教授会の役割や、最終的な決定権の所在を変更する改正となった。

 これまで本学の規則では多くの事項について、教授会の「議に基づき」学長が行う、などといった表現により、教授会の意思決定に重きが置かれていた。改正ではこれらの表現を教授会の「議を経て」や、「意見を聴いて」などと変更。これにより、教授会と学長で意見が分かれても、制度上は学長が独自の判断で様々な事項を決定できることが明確になった。このほか規則改正に合わせて、規則を補足する学長裁定のうち、「副学長選考に関する要項」が廃止され、2件新たな裁定が制定された。

 規則改正の手続きについて、教員からは改正手続きの拙速さを指摘する声が上がっている。近年の大学改革の動向に詳しい社会学研究科の大河内泰樹教授によると、昨年6月の改正法成立以降、昨年中には執行部からの対応説明は一切なかったという。その後、今年1月の教授会で改正の概要が発表された後、2月の教授会でA4用紙85枚分に及ぶ改正案が提示された。さらに、意見聴取のための「サウンディング」が一度だけ実施され、翌3月の教授会では「決定事項」として改正内容が報告された。大河内教授は「多くの大学では学内規則改正案の検討を行う会議が設置されるなどし、全学的な議論が行われたと聞いている。しかし本学では執行部の担当者が改正案を作成し、教授会の改善案や一般の教員の意見が反映されることなく拙速な決定がなされた」と指摘する。

 学校教育法・国立大学法人法の改正では、従来は法律上「重要な事項を審議する」とされていた教授会の役割が、特定の事項について「(学長に)意見を述べる」と制限された。これまで多くの大学で学長と対立しがちだった教授会の権限を制限することで、学長権限を実質的に強化し、大学改革を加速させるのが法改正のねらい。法改正に伴って文部科学省は「留意事項」や「チェックリスト」、「Q&A」などを具体例とともに公表していた。

■学長選考規則も大幅改正

 学長選考規則とその関連規則は、他の規則と比べ大幅に改正された。主な変更点は①意向投票(※)を複数回行う規定の削除、②学長にふさわしい人物の基準に関する規定の新設、③学長の再任制度の新設、④学長の業績を審査する制度の新設の4点。変更点について、学長選考会議議長の青木人志・法学研究科長に話を聞いた。

(※意向投票……学長の選出にあたり、教員と一部の職員から、「意向聴取手続」として実施される。学生や職員が行う参考投票とは別のもの)

 意向投票では従来、学長候補者が3人以上の場合は過半数の票を得る候補者が現れるまで、得票数最下位の候補者を抜いて再投票を行ってきた。しかし①により、過半数の票を得た候補者が出なかったとしても、投票を一度で終了することになった。青木議長は、意向投票の結果を選考結果に直接反映させずに、選考会議が主体的な選考を行うこと、とした文科省の通知を踏まえた改正であるとした上で、「解釈が分かれる問題。従来のやり方でも選考会議の主体性は保証されているという考え方もできる。だが、(改正後の方が)選考会議の主体性を幅広くとらえており、法改正の趣旨により合致していると考えている」と説明した。

 ②は国立大学法人法の改正点に直接対応する内容。青木議長によると、まだ基準は定まっていないという。今後教授会などへの意見聴取も視野に入れながら議論が進められる。

 ③は学長の一期目4年間の任期終了時に、選考会議の判断で学長の再任を決定できるようにするもの。選考会議は、④の業績審査結果などをもとに再任を決定する。これらも文科省の通知を踏まえた改正だという。青木議長は「選考会議は、日常的に学長の業務執行状況をモニターすることになる。選考会議の委員は、学長に任命権のある部局長(研究科長)などと経営協議会の学外委員から構成されているが、新設した再任規定と従来からある解任規定などが組み合わさることで、選考会議が学長をチェックする機能はより強化される」との考えを示した。

■「副学長選考」は廃止

 また、これまで行われてきた学生担当副学長の選考手続きが行われなくなることも明らかとなった。複数の候補者を立てるよう定めた「副学長選考に関する要項」が先月1日付で廃止されたことによるもので、学生担当副学長は今後、他の副学長と同様学長が単独で任命することとなる。

 従来、学生担当副学長は学長(同時期に学長が交代する場合、次期学長予定者)を議長として設置される副学長選考委員会が複数の候補者を公示し、学生・職員の参考投票などを経て選出されていた。要項の廃止と関連規則の改正により、選考委員会は廃止となり、学生担当副学長は他の副学長と同様に学長が単独で選任することとなる。

 沼上幹教育・学生担当副学長は制度廃止を法改正に対応する措置と説明しているが、改正法では副学長の選任方法への直接の言及はない。大河内教授によると「最終的な学長の決定権が担保されていれば、学生自治会および組合とのこれまでの関係を尊重して参考投票を行い、その結果を踏まえて学長が決定するという制度は法令に反するものではない。今回の(選考を廃止する)決定は法改正に便乗し、歴史的に形成されてきた本学の自治の伝統を破壊するものだ」と話す。

 なお、学部・院生の両自治会では、今後も学生担当副学長の選任に際し、公開質問状の作成と自主的な投票の実施を継続してゆく考えだという。