10月4日、本学創立150周年記念事業の一環として、本学大学院言語社会研究科主催のシンポジウム「総合知が求められるいま、人文学は何を担うのか」が開催された。本イベントは、東キャンパス東2号館を会場に、Zoomウェビナーによるオンライン配信を併用したハイブリッド形式で実施された。前半の全体会と後半の個別セッションから構成され、全体会では全体シンポジウムに加え、特別企画が行われた。
本紙は、特別企画として実施された講演「現在の《武蔵野深き》と山田耕筰の《武蔵野深き》:2つの《一つ橋の歌》」に注目した。この講演は、池森義文さん(令6商)と小岩信治教授(言語社会研究科)によって共同で行われた。講演では、本学の校歌「武蔵野深き」について、作曲家・山田耕筰によって1950年に作成されたオリジナルの楽譜と、現在使用されている楽譜との比較を通じて語られた。両者の違いを分析するとともに「武蔵野深き」の変遷と現在における位置づけなどが論じられた。
はじめに、池森さんは、かつて多くの学生に親しまれていた「武蔵野深き」が、現在では馴染みの薄い存在になっている現状を、自身の体験を交えながら指摘した。
また、山田耕筰の楽譜には最初から最後までピアノ伴奏が記載されている一方で、現在の楽譜では前奏部分のみにピアノ伴奏譜が存在している点など、両者の違いを具体的に分析した。
さらに、山田耕筰によるオリジナルの楽譜が学内で実際に使用された形跡が確認されていないことについて触れ、その理由について、校歌がピアノ伴奏で歌われる機会が限られていたことなどを挙げた。
池森さんは、山田耕筰により楽譜が作成されてから75年、そして本学創立150周年を迎えた節目の今こそ、山田耕筰オリジナルの「武蔵野深き」について考える絶好の機会であると述べた。また、山田耕筰の「武蔵野深き」と、現在の「武蔵野深き」には異なる点が多いとしつつも、一つの曲として時代を超え、卒業生と現役学生をはじめとする本学関係者を繋ぐ「架け橋」としての役割を果たしてきたと語った。
講演の最後には、池森さんの指揮のもと、参加者全員で山田耕筰オリジナルのピアノ伴奏に合わせて「武蔵野深き」を斉唱した。会場は一体感に包まれ、記念すべき講演の締めくくりにふさわしいひとときとなった。