昨年11月26日、山内進前学長の退任記念講演会が開催された。「中・近世ヨーロッパの人・戦争・法―『北の十字軍』を中心として」と題された本講演会には、山内前学長のかつての教え子や現役学生らが参加し、会場の31番教室はほぼ満員となった。

 講演会は「なぜ歴史を学ぶのか」という問いから始まった。山内前学長はパンセの言葉を引用し、「実定法は山や川一つで変わってしまう。もっと普遍的なことを学びたいと思って歴史の道を選んだ」と、学問に対する思いを語った。

 今回のテーマである「北の十字軍」とは、中世においてドイツ・ポーランド・バルト海周辺をキリスト教化し、その過程において略奪・支配を行った軍隊のことを指す。山内前学長は「十字軍は異教徒は権利を持たないから攻撃・略奪をしても良いという考えだった」と当時の価値観についてまとめた上で「西洋には攻撃の思想だけではなく他者との共存を目指す思想もあった。今後は、その共存の思想に重点を置いて研究を続けていきたい」と述べた。