9月27日に実施された自民党総裁選で石破茂氏が新総裁に選出され、10月27日の衆議院選挙では連立与党の自民、公明両党が議席を過半数割れさせるなど、昨今、国政をめぐる動きが活発化している。その一方で若年世代を中心に投票率は上がらず、学生を含む若者が政治に何を求めているのかが見えにくい状況となっている。そこで本紙は、国立キャンパス内で本学学生を対象に、政治意識に関する調査を実施した。加えて、本学の政治経済系サークルである「くにたち時事研究会」(以下、時事研)の中島勇希さん(経2)にも取材を行った。 意識調査は自民党総裁選後の、10月14日の昼休みと3限の一部、17日の昼休みに、国立西キャンパス内で実施した。調査の趣旨に同意してくれた学生に「新総理に望むことは何か」を尋ね、「経済・物価高対策」 「人権・ジェンダー政策」 「外交・安全保障政策」 「少子化対策」「政治の信頼回復」 「この中にはない」の6つの選択肢から答えてもらった。結果としては、「経済・物価高対策」を選んだ学生が最も多く、次に多かったのが「人権・ジェンダー政策」であった。「外交・安全保障政策」や、衆院選でも争点の一つとなった「政治の信頼回復」と回答した学生は少なく、「少子化対策」 「この中にはない」と回答した学生はいなかった。
また、調査に協力してくれた学生に、その選択肢を選んだ理由についても尋ねた。「経済・物価高対策」と答えた学生からは、「来年から社会人になる都合上、経済は一層重要になる」 「一人暮らしなので、物価高は苦しい。特に野菜が高い」「物価上昇に賃金が追いついていないので、そこを対策してほしい」といった声が上がった。「ジェンダー・人権政策」と答えた学生は、「国連から選択的夫婦別姓を求める勧告が出ている。政府がどのように対応するのかが気になる」「日本はジェンダー政策に遅れがある。経済を発展させるためにも、労働力である女性の社会進出を促した方がよいと思う」「障がいを持つ兄が生きやすい世の中になってほしい」などと主張する。「政治への信頼回復」と答えた学生は、「政権交代が起きにくいため、まずは自民党に率先してしっかりやってもらいたい」と述べた。
時事研の中島さんは、この調査結果について「面白い結果だなと思った」としたうえで「経済・物価高対策」という回答が最も多いことについて「アメリカのビル・クリントン氏が言っていた『問題は経済なのだ、愚か者!』という言葉が想起された。メディアではいわゆる裏金問題が取り沙汰されるが、やはり重要なのは日々の暮らしということだろう」とコメントした。クリントン氏はこのフレーズを利用することで、外交・安全保障の分野で功績を挙げる現職大統領のジョージ・H・W・ブッシュ氏を破り、アメリカ大統領選挙に勝利した。今回の衆議院選挙においても、「手取りを増やす」をスローガンに掲げ、現役世代の待遇改善を訴えた国民民主党が大きく議席を伸ばし、経済政策面で首相と協議を行うなど、国政への影響力を強めている。
また「ジェンダー・人権政策」の回答が次点で多かったことについては「本学の社会学部では、ジェンダー系の授業に力を入れている。そういう意味では『らしい』結果だと思う」と話す。ただし「外交・安全保障政策」が少なかったことについては「石破氏は安全保障のプロを自称しており、安全保障に関するイシューはホットになると思っていた」ため、意外な結果であると驚いていた。
最後に、今後も激動 が予想される政治動向を、時事研としてどうウォッチしていくかを尋ねたところ、中島さんは「時事研は『不偏不党』をポリシーとしている。特定の党に寄った立場だと、党派性でバイアスがかかった見方になってしまう。そうではなくて、フラットな視点から、時事研オリジナルの分析をしていきたい」と語ってくれた。時には自分と異なる意見も取り入れて、冷静な見方で政治を捉えてゆく姿勢は、私たち一人一人にも求められているといえよう。
今回取材した「くにたち時事研究会」は「不偏不党」「政治経済をもっと気軽に、もっと近くに」をポリシーとして、今年6月に設立された新進気鋭のサークルである。現在のメンバーは20人(10月末時点)、代表は五味佳大さん(社2)。
インタビューに対応してくれた中島さんは、時事研の活動の一つとして議員インタビューを挙げ「党内の実情など、メディアや世間の言説からはわからないことを聞くことができる」とその魅力を語る。過去には国定勇人氏(自民党・平9商)や青島健太氏(日本維新の会)、小川淳也氏(立憲民主党幹事長)、黄捷(フアン・ジエ)氏(台湾の立法委員)など、党派や国境を超えて議員経験者を取材しており、これらの議員インタビューについて会誌『Dennoch』にまとめて、一橋祭で配布するとのことである。
中島さんは「議員インタビューはこれからも継続して行っていきたい。難しいかもしれないが、公明党の石井啓一氏や共産党の志位和夫氏にも取材を行えたらと考えている」と意気込んでいた。
時事研の活動に興味がある方は、会公式X(@kuni_jijiken)またはインスタグラム (@kuni_jijiken )のDMまで。