経済哲学の研究で知られる本学の元学長、塩野谷祐一氏が8月25日、肺がんのため死去した。83歳だった。葬儀は近親者のみで同月28日に執り行われた。
塩野谷氏は58年、本学大学院経済学研究科博士過程を修了し、同経済学部教授・学部長を経て、89年から92年まで学長を務めた。02年、文化功労者に選出。
著書に『経済と倫理――福祉国家の哲学』(東京大学出版会)、『シュンペーターの経済観――レトリックの経済学』(岩波書店)など。
〇山脇直司氏(東京大学名誉教授・哲学者)の話
一 橋大学3年時に塩野谷ゼミに入って以来、先生とは長いお付き合いでした。当時の先生は経済理論が専門でしたが、私が一橋大学を去り、研究領域を経済学から 哲学に代えたのと同時に、先生もロールズなどの社会哲学やドイツの歴史学派に関心を広げられたのは、意外であり不思議な縁を感じたものです。つい最近まで 意見を交換し合える学友の関係を築き得たのは、私にとって大きな喜びであり、国際的に注目されている先生のご業績を今後どのように発展・継承すべきなの か、私なりの観点(社会哲学、公共哲学)からじっくり考えていきたいと存じます。先生のご冥福を心からお祈りする次第です。