SDS学部長・研究科長インタビュー 渡部敏明教授

 今年4月、ソーシャル・デ―タサイエンス学部・研究科(以下、SDS)がいよいよ本学に開設される。当紙では、SDS設置までの取り組みと今後の展望について、渡部敏明教授(ソーシャル・データサイエンス学部長・研究科長)にお話を伺った。

 SDSの開設準備は、2020年10月に設置されたソーシャル・データサイエンス教育研究推進センター(以下、センター)を中心に進められてきた。渡部教授は「文部科学省からの設置認可を得るために大量の書類を書く必要があり、また所属教員を十数名採用することにも大変な苦労があった」と当時を振り返る。そのため、昨年8月に実際に設置が認可されたときには、非常に嬉しく思ったという。

 こうして今春開設されることになったSDSだが、その特徴はどこにあるのか。改めて渡部教授に尋ねた。SDSではその名の通り、社会科学とデータサイエンスを融合させた教育を行う。現代社会の課題を解決するためには、データサイエンスの知識がますます重要になっているが、この知識を実社会に応用するためには、社会科学の知識もまた不可欠となる。社会科学の総合大学としての本学の強みを活かした両面的な教育こそが、近年流行中の他大学のデータサイエンス系学部と一線を画す、本学SDSならではの魅力だという。

 SDSの設置は、既存4学部を含めた本学の教育全般に、どのような影響を与えるのだろうか。渡部教授は、SDSの設置は本学全体に恩恵をもたらすだろうと語る。確かに、データサイエンスは既存の4学部でも一部教えられてきたが、それらはあくまでも伝統的な統計学を中心にした内容であった。対してSDSでは、AIや機械学習、言語処理や画像処理など、より先端的なデータサイエンスについても体系的に学習することができるという。そのため、データサイエンスに関心を持つ他学部生に対しては、「ぜひSDSの講義を履修して、データサイエンスの技術を身に付けてほしい」という。また、特定の社会科学領域の学習を深めたいSDSの学生には、他学部の専門的な講義の履修を推奨する。SDSの設立により、学部間の垣根を超えた柔軟な履修ができるという本学の魅力が、ますます深化していくことだろう。

 今回のSDS新設は、周囲からどのように受け止められてきたのか。渡部教授は、ソーシャル・データサイエンスという聞き慣れなく新しい学問領域に対し、謎めいた印象を持った方が多いと感じているという。象徴的だったのは、「ソーシャル・データサイエンス学部」という名称に対する周囲からの反応だ。この名称が横文字でかつ長いため、既存の商経法社の4学部になじまないとして、賛否両論が渦巻いた。渡部教授はこうした指摘にも一理あるとしながらも、正確性を重視する以上、ほかの言葉には代えられないと話す。「データサイエンスは、AIや統計学、情報科学などを含んだ幅広い学問領域で、それに対応する日本語は未だない。そして、この横文字に付す言葉は『ソーシャル』しかない」というのが渡部教授の見解だ。なお、この名称は本学の造語ではなく、海外の大学でも一般的に使われている用語だという。

 この一件が示唆するように、SDSに対する一般の認知度はまだまだ低い。そこで、センターでは受験生はもちろん、企業や官公庁などを含めた社会全体にSDS設置の意義や社会へのインパクトを理解してもらうべく、精力的に広報活動を行ってきた。昨年秋には学部・研究科独自のオープンキャンパスを、12月にはJR東日本のトレインチャンネルでの広告掲載を行い、受験業界などからの取材依頼にも積極的に応えた。それが功を奏したのか、初年度入試の志願倍率は、前期日程が6・1倍、後期日程が25・8倍というかなりの競争率となった。積極的な広報活動が、一定の成果を見せた形だ。

 最後に、渡部教授に、SDSの今後についてコメントをいただいた。渡部教授は「以前所属していた経済研究所とは異なり、センターの仕事は、やることなすこと初めてなので、暗中模索だった」と、設立までを振り返る。その上で、「学部長・研究科長の責任の重大さをひしひしと感じている。優れたソーシャル・データサイエンティストを育てるべく、教員一丸となって良い教育を提供していきたい」と強い意気込みを見せた。

取材に協力してくださった、渡部敏明SDS学部長・研究科長
(提供:本学広報課)