「政治と若者」というと、SEALDsのような積極的な政治活動を行う学生らが各種メディアで取りあげられている。またその一方で、消費税や安保法案といった個別の政策について関心を持ちつつも、現在の政治体制に対しては諦観している学生も少なくない。今回本紙では、政治への意識にまつわる問題について本学社会学研究科の中北浩爾教授に話を聞いた。
-現代日本の大学生は、日常的に政治について語ろうとする気風があまり強くないように思われます。
「それは、政治的なものが大学のキャンパスから希薄になっているからだと思います。日本ではドイツなどとは違って大学に政党の学生支部がほとんどありません。アメリカでは明確な支持政党を持つ学生が多く、大統領選挙の候補者などが日常的な話題になります。日本でも、かつては政治系の学生団体が積極的に活動していましたが、今では影をひそめてっています。政治が身近に存在しない。だから政治について議論しようという空気感も生まれないのでしょう」。
-では、そうした中で政治への意識を深めていくには何が必要なのでしょうか。
「政治へのコミットメントの機会を実際に作ってみることが重要です。選挙で問われるのは、政党がそれぞれの理念に従ってパッケージした政策です。ですから、個別の政策に注目しすぎるのは必ずしも正しくありません。例えば、家族が投票しているからでもいいですし、なんとなくでも構いません。好きな野球やサッカーのチームのように、ひいきの政党を持ってみて、少し腰を据えて応援してみる。そこから自身の政治的関心を広げていってはどうでしょうか。投票はもちろん、演説会に行ってみたり、献金したり、デモに参加するのもよいかもしれません」。
-しかし、私個人としては例えばSEALDsのような活発なデモには抵抗感を覚えるのですが。
「最近のデモはお祭り気分で、気楽なものです。自由参加で、来る人は拒まず、去る人は追わず。テレビやネットを通してではなく、一度実際に見に行ってはどうでしょうか。何事も経験です。食わず嫌いはよくありません。もちろん、デモ以外にも、投票に行く、献金する、選挙の手伝いを行うなど、民主主義の下では色々な政治参加の手段があります。自分なりのやり方で、政治に関わればよいと思います。一番望ましくないのは、よい社会を作ろうと、それぞれの方法で頑張っている人たちを、外から嘲笑すること。なにも政治に限りませんが、様々な現場に足を運んで、色々な人たちと交流しながら、失敗を恐れず、試行錯誤していくことが大切ではないでしょうか」。
これまで私はデモのような政治活動に参加するのではなく、個別の政策を吟味しているだけでも政治を考えるかたちとして充分だと考えていた。しかし今回の取材を通じ、とりあえずひいきの政党を持って一票を投じてみる、デモに足を運んでみるといった、具体的な政治へのコミットを通じて自身の見識を広げる可能性にも改めて気付かされた。そのようにして実際に政治的な環境に自分自身をあえて置いてみることで、我々は政策の吟味だけでは持ちえなかった当事者意識などが新たに獲得できるようになるのかもしれない。