地域活性化という言葉は身の回りにあふれている。しかし実際に地元や大学地域の活性化に取り組む人はそう多くない。学生が地域活性化のためにできることはあるのか。実際に本学近辺で地域活性化に取り組む学生を取材し、学生を中心とするまちづくりの現状と課題を探った。

本学の学生を中心とするサークルPro‐Kは経営とまちづくりを軸とし、谷保で店舗経営や商店街の活性化に取り組んでいる。店舗の一つで2012年にオー プンした雑貨屋ゆーからは、近隣住民から委託された手作り雑貨を学生と市民スタッフが販売し、市民の表現の場として地域活性化の一翼を担っている。

安田裕太郎さん(社2)
安田裕太郎さん(社2)

  大学生の雑貨屋経営は果たしてうまくいくのか。店長の中村浩人さん(経3)は「最初の2年間は赤字だった」という。一般的な雑貨屋は店主のコンセプトや流 行に合わせて商品を仕入れるが、ゆーからは各出品者に商品を一任している。そのため商品展開の工夫によって経営を改善させることは難しい。そのなかで経営が黒字に転じた理由として、中村さんは知名度の向上を挙げた。中村さんは「ポスティングやSNSの利用によって、現在は近隣に住む中高年の女性を中心に出 品者も常連客も増えている。今後は近隣の高校生や一橋生など、若い方にもゆーからへ足を運んでもらいたい」と語る。Pro‐K次期統括でゆーから所属の安田裕太郎さん(社2)も「ゆーからは人と人をつなぐ場所。個人的な意見としては、学生を含め地域住民でない人も地域コミュニティの一部と捉えていきたい」 と考えている。

経営が安定しつつある一方、共に活動する地域住民との関係強化は課題として残る。年齢も経験も違う大人と活動することは 学生にとって貴重な経験だが、容易ではない。安田さんは「長年行ってきたキャンペーンに代わる良いものはないか、など地域の方は僕たちにアイデアを求めて くれる。しかし来たばかりの自分たちが地域の伝統を変えていいのか、と遠慮してしまうメンバーもいる」と話す。地域との壁をなくし交流を図るため、運営を 取り仕切る学生は日々の活動の他に市民スタッフとの食事会を設けている。中村さんは近隣の商店主とは営業時間外に遊ぶほどの仲だという。
これほど密な関係があれば十分ではないかとも思えるが、Pro‐Kの活動当初に比べれば関係は希薄になってしまった、と安田さんは感じている。「時間が経ち、活動が拡大すれば関係が薄くなってしまうのは仕方ないことではある。ただそれを仕方ないと片付けずに打開策を考え続けることが大切」とさらなる関係強化を目 指す。

Pro‐Kの活動は学生の力だけで進んでいるものではない。谷保の活性化は熱意ある学生と地域の人々が共に活動することで支えられている。今後は、若年層を取り込むことと地域住民とのつながりを強化することの2点が活動の鍵となるだろう。