THE IKKYO SHIMBUN

奨学金受給者のホンネ《後編》

 4月号では現役一橋生に奨学金への意識について話を聞いた。就職への安心感から、彼らは返済への不安をあまり感じていないという。ところが実際に奨学金を返済している一橋のOB・OGは、満足のいく収入を得られるとは限らないうえ、就職後も人生の方向転換を迫られる機会は多く生活はなかなか安定しないと話す。

 Kさん(平22社)は高校の3年間と大学在学中の1年間奨学金を受給し、大手出版社に就職。「月々1万3千円の返済はそこまで苦しくないです。ただ、毎月返済分家計が圧迫されますから、会社の経費立て替えがある際など急な出費が発生した時に、毎月決まった返済があるというのはつらかったです。あと貯金は貯まりにくいですね」新卒で入社した会社が買収されたのを機に転職した。「卒業5年後にクラス会をした時、私の同級生も3分の1くらいは転職をしていました。新卒で入った会社の社風が自分に合わないというのは結構ぶつかりやすい壁です」

 Mさん(平17社)は転職を重ね現在は独立。「新卒で入った会社はブラック企業で負担が重く、退職して非正規社員として働き始めました。月給は20万前後。自分が学生の頃イメージしていたライフスタイルとは全然違います」その後早稲田大学のロースクールへ入学。学部生の頃は奨学金を受給していなかったが、院生の間に受給した奨学金の返済額は日本学生支援機構の第一種(無利子)と第二種(有利子)を合わせて約570万円にもなる。ロースクール卒業後弁護士事務所勤務を経て、2年前弁護士事務所を開業した。独立の際、奨学金とは別にさらに150万円を借り入れた。「僕は月々3万円の返済があります。奨学金に加えさらに借金をするというのは精神的につらいものがありました。一橋卒で独立を志す人も結構な割合でいます。何か新しいこと、自分のやりたいことを始めようという時、金額によっては奨学金が重くのしかかります」

 学生の私たちがぼんやり思い描くのは順調で安定した社会人像かもしれない。だが社会に出れば想定外の転機が訪れることもあるだろう。安定を手放した時、奨学金返済が追い打ちをかけるように負担としてのしかかる可能性があることは、今から心構えをしていた方が良さそうだ。