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奨学金受給者のホンネ 《前編》

 隔年で学生委員会が発行する「よりよい一橋ライフのために~学生生活調査とその分析」によると、11・7%の学部生が各種奨学金の斡旋を受けたことがあると回答している。メディアでは奨学金返済に苦しむ若者が頻繁に取り上げられるが、一橋生のリアルはどうなのか。

 知久道さん(商2)は、日本学生支援機構による第一種(無利子)奨学金を受給している。彼によると、普段の学校生活で意識するのは奨学金を受給していることよりも、そもそもの家計の厳しさだという。「医療費も自分のバイト代から出すので、お金がカツカツな時は病院に行かず我慢することもあります」知久さんは学費の全額免除を受け、奨学金は食費や交通費といった生活費にあてる。部活など学生生活の+α部分にかかる費用はアルバイトで補っていく。「自分のやりたいことのためのアルバイトをしているだけなので、奨学金を受給していない一人暮らしの学生とほぼ変わらない生活ではないでしょうか」奨学金を受けていない学生の中には、一人暮らしをしていても、どうしてもお金がないときは親に援助を求め、留学やダブルスクールにかかる費用を出してもらうことができる学生も多いだろう。しかし知久さんは親からの金銭的サポートを受けることが困難で、自分自身で工面するしかない。「奨学金受給者でも勉強とアルバイトだけやっていればコツコツお金を貯めて留学に行くこともできる。ただ僕の場合は自分のやりたいことにある程度お金と時間がかかるので、自分のやりたいことか留学か、どちらかを選ばなければなりません。あと、家が遠くて本当は一人暮らしがしたい。その費用を貯めるためのアルバイトを増やすことも考えています。自分でどうにかするしかありませんから」

 メディアでは奨学金の返済に苦しむ若者が頻繁に取り上げられる。知久さんは「世帯収入が低いので、僕も就職したら家にお金を入れないといけません。待遇を重視して就職活動はしようと思います。ただ、毎月約一万円を20年間返済していくプランなので、正直返済の負担の心配はあまりしていません」と話す。同じく第一種奨学金を受給する赤崎翔悟さん(商3)は、奨学金を格差を埋めるものとは捉えていないという。「単純に未来の自分から借りている感覚。一橋卒なら就職は何とかなると思うし、順調に返していけるつもりでいます。月に約一万ずつ返すことがどれ程の負担になるのかはあまり想像がつきません」

 一橋卒ならば安定した収入が得られる職につけるだろうという安心感からか、奨学金を受給していても返済への不安はあまりないようだ。次号では本学在学中に奨学金を受給し現在返済中の社会人に、実際の返済の負担について話を聞く。