THE IKKYO SHIMBUN

新入生歓迎号大型企画・卒業生インタビュー② 大和アセットマネジメント 小松幹太社長

こまつ・みきた 大和アセットマネジメント代表取締役社長。1962年、兵庫県生まれ。85年に本学商学部を卒業後、大和証券に入社。2011年大和証券グループ本社執行役員、20年同社執行役副社長などを経て、22年から現職。25年4月1日に退任し、2日から大和アセットマネジメント顧問(エグゼクティブ・アドバイザー)に就任予定。

 卒業生インタビュー企画の2人目は、大和アセットマネジメント株式会社の小松幹太代表取締役社長(昭60商)。本インタビューでは小松社長の学生時代、社会人時代のエピソードに加え、大和アセットマネジメントの魅力についても語ってもらった。

――どのような学生時代を送られていましたか。
 受験戦争から解放され、まず中高から続けていたサッカー部に入部しました。1年生の間はサッカー部中心の生活を送っていたのですが、膝を故障してしまい、2年生の夏には部を引退することとなってしまいました。そこで何か膝を傷めずに打ち込めるものがないかと考えて、ゴルフ部に入部しました。
 サッカー部とゴルフ部で部活動中心の学生生活を送っていたわけですが、そのことは今仕事をする上でも糧になっていますね。部活動を通して得た一橋の同輩やOBとの人間関係は、社会に出て仕事をする上でも度々役立っています。部活・サークルで得た人間関係は大切にした方がよいと思います。

――部活動経験が今でも生きているのですね。大学時代の勉強、ゼミについてもお聞きしたいです。
 部活動中心ではありましたが、もちろん勉学にも精を入れました。「伊藤レポート」で有名な伊藤邦雄さん(現在は本学CFO教育研究センター長)が当時はまだ講師で、厳しい授業をされていました。当時の私は果敢に勉強に臨み、会計制度についてのレポートを書き上げた結果、伊藤先生から「優」の評価を頂くことができました。
 またゼミでは、雲嶋良雄先生の下で労務管理を学んでいましたね。体育会の部員が多く所属しているゼミでしたが、忙しい体育会の活動を応援してくれる先生で、ありがたかったです。

――文武両道の学生生活だったわけですね。何かアルバイトなどはされていたのですか。
 アルバイトは家庭教師、飲食店の厨房やデパートの裏方の仕事に至るまでいろいろとやっていました。教材販売のバイトで思いの外、商材を売ることができたことは、大和証券での仕事にも役立つよい経験でしたね。

――学生時代について一通りお聞きしました。では就職活動の際、金融・証券業界、大和証券を最終的に選んだ理由を教えてください。
 率直に言うと偶然の出会いという部分が大きいですね。実は最初は証券会社を志望しておらず、ゼミで学んだ労務管理の知識を生かせるメーカー業界を志望していました。しかし、第一志望だった会社の人事に「君は向いていない」と言われ、どうしようかと思っていたところ、偶然その会社のビルの隣に当時の大和証券の本社があったわけです。その後、大和証券で対アジアの事業を行っていた人からユニークな海外ビジネスの話を聞くことなどもありました。
 そして決定的だったのが、その話を聞いた後、帰りにたまたま入った書店で『大和證券国際部』という本を見つけたことですね。その本は当時刊行されていたシリーズもので、大和証券が海外で行っている刺激的な事業のエピソードの数々が記されていました。そこで私は証券会社が個人への営業だけでなく、グローバルな事業も取り扱っていることを知ったわけです。
 元々私は洋画好きで、メーカーを志望したのは、海外で活躍できるからという理由も大きかったのです。しかしこの本を読んだ後は、大和証券の方が面白いと感じ、そこから本格的に志望するようになりました。

――大和証券入社後、小松社長は実際に世界各地で働かれてきたそうですが、当時のエピソードを教えてください。
 私は入社時から海外でMBAを取得したいと考えていました。大阪で個人向け営業に数年間従事した後、留学生試験を受けたのですが、英語力が足りず、最初に海外に行ったきっかけは会社による西ドイツへの語学留学でした。
 そして次にスイスに赴任し、機関投資家向けに日本株などの営業を行いました。その後、世界の金融の中心はやはりロンドンだということで、ロンドンに異動させてもらいました。ヨーロッパには10年間滞在し、楽しい思い出もありましたがアジア通貨危機、ロシア危機などの金融危機も目の当たりにしました。ヨーロッパの次はニューヨークに行きましたね。エキサイティングな都市でしたが、9・11(アメリカ同時多発テロ)に遭遇し、私も当時避難をしました。
 そして一度日本に戻った後、ロンドン現地法人の社長になりリーマン・ショックからの立て直しなどを行いました。それが一段落した後、念願のハーバード大学に、AMP(アドバンスド・マネジメント・プログラム)で2カ月間行けることになりました。知識もさることながら、ディスカッションの方法や世界のトップエグゼクティブのレベルを知れたのが何よりよかったですね。またその際にできた人間関係は、今でも大切にしています。

――AMPではビジネスに直結する知見や技法を得られたのですね。一方で、大学での学びが仕事をする上で役に立った経験はありますか。
 これは偶然なのですが、卒業論文で扱ったピーター・ドラッカーの思想が今のビジネスにつながっています。現在、大和アセットマネジメントはドラッカー研究所と提携した米国株、日本株ファンドを開発し、運用しています。大学での学びが何十年の時を超えて役立っているわけですね。
 ついでに偶然の話をもう一つすると、ドラッカーの親族を社内に招いた際、ドラッカーのひ孫さんがドラッカーの本を読んでいる姿の写真を頂いたのですが、その本がなんと私が卒論で扱った本と同じだったのです。その写真を見たときは驚きましたね。

――そんな偶然があるものなのですね。さて大和アセットマネジメントのお話が出てきましたので、ここで社長自ら就職活動中の学生に伝えたい、同社の魅力についてもお聞きしたいです。
 当社は自社で運用するファンドも多数ありますが、「サブアドバイザー」という海外の運用会社に運用を委託しているファンドも多数あります。
 例えば、米国のリート(不動産投資信託)なら、自分たちで運用するよりも、現地のリートを得意とする運用会社に運用を委託した方がより顧客に利益を還元できる場合もあるのです。
 世界各国の運用会社とこうしたつながりがあるため、当社の社員を研修させてくれないかと頼むと、世界中に受け入れてくれる運用会社があるわけです。
 一昨年からこの海外研修を取り入れ、今では何十人もの社員が世界中のリアルな投資の現場で学んでいます。私自身の海外経験もあり、社員には積極的に海外で学ぶ機会を与えたいと考えています。
 また私自身が大学時代、部活動をしていたこともあり、社内でのクラブ活動が非常に活発なことも魅力ですね。ゴルフやマラソンなどのチームがあり、先日はちょうど社員同士でクラシックオペラを鑑賞してきたところです。このように、当社は仕事もプライベートも、そしてチャンスも充実している非常に魅力的な会社だと思っています。

――最後に新入生に向けてメッセージをお願いします。
 やはり私は皆さんには「ゴー・グローバル」を推奨したい。世界に視点を据えて、目先のことではなく長期的な展望を持てば、部活でもバイトでも何を学んでいけばよいか、おのずと道は開けてくると思います。実はこの「ゴー・グローバル」という言葉は、私が大和証券に入社した時の入社パンフレットに書かれてあったものなのです。ぜひ世界を見据えて頑張ってみてください。