今回、本紙が取材をしたのは、国立市の職探しのためのサイト「国立人(くにたちじん)」だ。国立市に拠点を置き、同サイトの運営を行う合同会社三画舎の加藤健介さんと中村巴音さんに、「国立人」をはじめとした国立での活動や、まちと関わる中での思いについて話を聞いた。
「国立人」は地域に根付いた商店や国立を中心に活動するクリエイターなど、国立市の魅力を紹介すると同時に、お店や事業者の理念や考えを紹介することで、求職者と求人のマッチングを目的とした求人サイトである。求人サイトとして独自の形をとる本サイトは、もともとは加藤さんの妻である加藤優さんが立ち上げたものだった。
優さんは人材派遣系の企業で多摩地域を担当していた。その中で、条件や給料のみに注目し就職した際の相互的な違和感をもたらす典型的な求人メディアのあり方に疑問を持ち、個人事業として立ち上げられたのが本サイトだった。また、同時期にコミュニティスペース「国立本店」への参加をきっかけに、国立のまちに興味を持つようになった夫の加藤さんも、その後サイトの運営に携わりはじめた。その後、加藤さんがもともと運営していたまちづくりのコンサルタントを行う三画舎の一事業として吸収された。加藤さんは、求人の適切なマッチングが、まちの魅力向上の一助につながると考えたという。そのため「国立人」では従来の広範囲で画一的な求人情報メディアと差別化を図り、地域のライターが国立を起点に小さい範囲で、掘り下げた取材を行っている。
全国で4番目に面積の小さい市である国立市は活動していくうえで、活動による成果が表れやすく、魅力的なまちづくりのために実際に動きやすい環境が整っていると二人は話す。国立市で生まれ育った中村さんは「自身が育った国立の魅力を三画舎の活動を通して改めて発見した。小さい国立市だからこそ市民の一体感が生まれやすく、共通の話題が多いことでコミュニケーションを取りやすいことが魅力のひとつ」と語る。
今回の取材会場となった「みんなのコンビニ」店舗は国立市やその周辺の事業者やクリエイター、これからお店を始めたい人などに棚を貸し、まちにおける新たなチャレンジを応援するという目的のもと設置され、現在三画舎が主体となって運営している。「地域で育てていくコンビニ」というコンセプトのもと、同店舗は国立市民同士また他の市民が交流する憩いの場の役割も果たし、棚に置かれた商品や作品だけでなく、人々がまちそのものに興味を持ってもらうことを促す。
「国立人」の掲載求人数は、コロナ禍によって一時少なくなったものの、現在は回復傾向にある。「みんなのコンビニ」運営スタッフの求人募集には「『国立人』を見た」という一般の面接希望者が十数人集まった。
ただ、求人情報は学生向けのものばかりではないものの、一橋生からの応募は少なく、加藤さんは国立のまちづくりへ本学の学生にさらに参加してもらいたいと考えている。まちづくりサークルや旧国立駅舎でのDJイベント、ゲストハウス運営など、一橋の学生による地域での活動はある一方、学生それぞれの個別の活動だけでなく、さらに国立のまち自体への興味も持ってほしいという。加藤さんは現在、自身が国立に興味を持つきっかけとなった「国立本店」の責任者を引き継ぎ、毎年社会人、学生を問わず運営メンバーを募集し、サポートしている。長年国立で生活する世代と異なる視点を持つ若者が、フラットに意見交換が行えるような環境を整えることが自身の仕事の一つだと語る。
中村さんは「大学生には視野の広さ、行動力をもってほしい、それが将来のキャリアの柔軟性につながる」と語る。「国立人」には国立市の魅力的なお店や人々、求人が数多く掲載されている。まずはひとつ足を運び、大学から国立のまちへ、目を向けてもいいかもしれない。