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もう一つの一橋 千代田キャンパスに潜入

 東京メトロ竹橋駅近く、本学同窓会組織「如水会」のある千代田区一ツ橋の如水会館の隣に一橋大学のキャンパスがあることをご存じだろうか。今回、一橋新聞部は「一橋大学千代田キャンパス」を訪問した。
 現在千代田キャンパスには経営管理研究科、法学研究科等の一部専攻やプログラムの授業が行われており、約400人が学んでいる。経営管理研究科には2つの専攻がある。国際企業戦略専攻は千代田キャンパスに本拠をおき、約80パーセントが留学生でMBA・DBA(※)の取得を目指し昼間に英語での講義が開かれている。一方経営管理専攻では、千代田キャンパスで日本語による2つのプログラムの講義が開かれ、東京駅に近い好立地であるため、多くの社会人が通う。また法学研究科にはビジネスロー専攻がある。国際企業戦略専攻を除き、講義は夜間大学院として、主に平日の18時20分から22時までの2コマが開かれている。ほとんどの学生たちがそれぞれのスケジュールに合わせ、週に3回から5回通うような履修を組むそうだ。

千代田キャンパスでの授業。実務経験のある教授が多数在籍している

 千代田キャンパスの教育には、国立での教育といくつかの違いがある。1つ目はその学生の多様性である。入学には社会人経験が条件となっており、東京近郊、なかには茨城県や静岡県から30代、40代を中心に60代までの学生が通う。社会人で一般企業に勤める人がほとんどであるため、入学した4月に海外赴任が決まり休学を申請する例もあるそうだ。また多くの留学生が学び、キャンパス内には祈祷室も設置されているほか、日本での就職支援という目的で夜間には日本語教室が開かれている。2つ目は講義の目的だ。学生の割合に社会人が大部分を占める理由として実務に生かせる講義という魅力がある。千代田キャンパスの専攻等のうち、国際企業戦略専攻MBAプログラムは専門職大学院という形をとり、実務経験のある教授の数が確保されるようになっている。企業に勤めながらの講師もいるため、立地の良さは講師にとっても魅力になるのだ。また夜間大学院学生は銀行・ファンドで勤務する人や人事異動によって法務部等に配属された人、企業から派遣された人などが大半で、大学時代には関連する学問を専攻していなかった学生も多い。授業は議論やグループワークの機会も多く確保されている。また海外からの学生、講師のために新型コロナウイルス感染症流行以前からオンライン会議のシステムを利用していたという。
 なぜ千代田に一橋のキャンパスがあるのか。その理由は1885年までさかのぼる。神田川の分流である日本橋川に架かる「一ツ橋」の北詰に東京商業学校が設置された。1920年には大学令によって東京商科大学に昇格するものの、1923年に関東大震災が起こり校舎は全壊し、更地にするための爆破によって残存した校舎もなくなった。1933年まで仮校舎を置いていたが、当時、箱根土地株式会社(現在の西武プリンスホテルズの前身)が主導していた学園都市構想に従う形で、国立にキャンパスが移された。残された土地には一橋記念講堂が建てられ、戦時中は皇居の隣ということもあり、大きな被害は免れた。ただ、1980年代以降はほとんど活用されず、1992年までツタと銀杏に一面覆われていた。すでに1990年代初めには夜間大学院としての千代田キャンパスの構想があり、1998年に学部を置かない独立研究科として国際企業戦略研究科を設置、2003年に国内初の経営系専門職大学院として実現した。

旧校舎の外観(提供:学園史資料室)

 国立の学部生にはなじみの薄い千代田キャンパスであるが、そこでは多くの一橋生が学んでいる。社会に出た後でも学ぶ機会はあることを忘れないでほしい。

(※)経営管理学の修士、博士(Master/Doctor of Business Administration)