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国立の銭湯・温泉 一橋新聞部員が実際に行ってみた

湯楽の里の露天温泉。富士山を望むことができる。(湯楽の里提供)

 厳冬を越え、満開の桜が咲き誇る春を迎えた。暖かい季節になってはいるものの、夕方から夜にかけて冷え込むことは珍しくない。そんな日、温かい湯船に浸かりたくなるのが、人間の性である。しかし、一人暮らしの人には、ユニットバスやシャワーの設備しかなく、満足に湯船に浸かることができない人も多い。
 今回の記事は、大学周辺にある銭湯・温泉を新聞部員が実際に巡り、それらの感想を書き記したものである。寒さに凍える一人暮らしをする学生の、少しの助けにでもなれたら本望だ。

国立の老舗銭湯 鳩の湯

 3月のある日曜の夕方。5月並みの暖かさを感じた昼間とは打って変わり、肌を刺すような寒さを覚えた。こんなお風呂日和の日に向かう場所は、国立唯一の銭湯「鳩の湯」である。国立駅から歩いて10分ほどの住宅街の中にある同所は、昭和33年に創業した、老舗のお風呂屋さんだ。
 入浴料を自動券売機で支払い(大人一人520円)、ロビーで受付を済ませる。こじんまりとしたロビーであったものの、照明で明るく照らされたその場所は、清潔感ある雰囲気を醸し出していた。実際、歴史ある銭湯ではあるが、4年前にリニューアルを施しており、全体として非常に新しく綺麗な印象を受けた。
 脱衣所を抜けたその先には、様々な種類のお風呂が広がっていた。一番に入ったのは、高濃度炭酸泉。筆者が訪れた際は、椿のいい香りが広がる「椿炭酸泉」であった。38℃とぬるめの湯加減ながら、血行をよくする炭酸ガスの効果で、すぐに身体がポカポカしてきた。一番風呂におすすめの湯船だ。続いて入ったのが、ジェットバスだ。3種類のジェットを楽しめるというこの湯船は、43度と比較的熱い温度である。熱い湯船の中、肩や腰をジェットバスに当てることで、日頃の疲れがなくなっていくように感じた。ジェットバスで身体を癒した後は、外気浴をすることがおすすめだ。和風の坪庭を望みながら、穏やかな時間を楽しむことができる。外気浴後、最後に向かった湯船が、シルキーバスである。ミクロの泡によって、真っ白なシルクのように見えるこのお風呂。細やかな泡によって、絹のような柔らかい肌感を得た。美肌効果も高そうだ。
 着替えを終えてロビーへ向かう。そこには、ペットボトル飲料から、瓶牛乳やパック飲料まで多岐にわたる飲み物が販売されていた。風呂上がりには必ず冷たい飲み物を飲む人に、おあつらえむきなサービスだろう。筆者が一番印象に残ったことが、フロントでの鳩の湯オリジナルグッズの販売だ。鳩のアイコンが入ったTシャツやトートバッグなどが揃っていた。それらのグッズが気になってしまった筆者は、その中から今治産オリジナルハンカチ(850円)を購入した。
 今回は時間の都合上利用できなかったが、サウナ施設もあるそうだ(男湯限定。追加で400円)。このように、リーズナブルな価格で気軽にお風呂を楽しみたい人に、ぜひ鳩の湯を勧めたい。運動部の人が、汗を流すためにふらっと立ち寄るのもいいだろう。

国立市唯一の温泉施設 国立温泉 湯楽の里

 極寒の中、自転車を走らせる。大学で勉強を終えて、谷保方面へ向かう。谷保駅を越えて、さらに10分ほど走らせたところに「国立温泉 湯楽の里」はある。

湯楽の里の露天温泉。富士山を望むことができる。(湯楽の里提供)

 大学の近辺に、銭湯や温泉は少ない。湯楽の里は大学から少し距離があるが、国立ではかなり大きな温泉の1つだ。入館料(大人、税込)は平日で950円、土・休日・特定日は1050円と、ほかの温泉に比べれば少し値は張るが、中には、温泉はもちろんのこと、レストラン、大量の漫画を備えたリラックスエリア、マッサージルーム(有料)があり、何時間でも滞在できる施設となっている。営業時間は9時から25時(最終受付は24時)であるが、週末の夕方以降はかなり多くの客でにぎわうため、筆者は平日の午前中を狙って行くようにしている。
 入館し、脱衣所に向かう。脱衣所は広く、大きなロッカーもあるため、大荷物であっても心配は無用だ。風呂の入り口には無料の水飲み場が設置されており、入浴前や入浴後に水分補給が可能だ。洗い場の数も充実しており、混雑する週末でも、さほど待たずに洗うことができる。洗い終えると、いよいよ入浴である。  
 まずは 露天風呂に向かい、「上の湯」と名付けられた湯船につかる。これは源泉かけ流しらしく、かなり熱い。昼間(特に冬場)は富士山を、夜は星空を眺めることができるため、かなり人気のようだ。隣には寝湯があり、寝そべりながら温泉につかることができる。寝てしまっている人もいるくらいリラックスできる空間だ。体が温まると、中に入り、炭酸泉につかる。湯温が37 度と低いのだが、炭酸には保温効果があるらしく、体感温度はそれ以上に感じる。次第に体に気泡が付着してくるのだが、それを見つめていたら、気づけばかなりの時間がたってしまう。

湯楽の里の高濃度炭酸泉。(湯楽の里提供)

 さて、 最後はサウナに向かう。ここは昼でも混雑しており、灼熱の上段席やぬるい下段席しか座れないことも多い。上段に行くと、すぐに限界がきてしまう。ワイドショーが大谷翔平の特集をしており、興味があったが我慢できずに早々と退出する。そのあとは水風呂だ。ほかの温泉と比べても冷たい部類だと思う。3分ほど入り、外にある外気浴用の椅子に座り休憩する。景色もよいため、これが一番好きな時間だ。
 入浴を終えて、リラックスルームに向かう。火照った体にとっては少し暑く感じるくらいに暖房が利いている。相当な種類の漫画があったり、テレビ付きの1人掛けソファがあったりと、快適に過ごすことが可能だ。2時間ほどここでくつろぐ。たまに、いびきをかきながら寝ている人がいるくらいに心地よい空間だ。
 湯楽の里は筆者が国立で最もお薦めする場所だ。新入生も慣れない環境に疲れてしまったら、ぜひ足を運んでいただきたい。