阿部仁准教授に聞く 教員の立場から見たPACE

 本学の全学部生が、必ず最初の1年間受講することになる科目「PACE」。英語のコミュニケーション・スキル向上に資する科目であるが、教員の立場からはどう見えているのだろうか。PACE教育の歴史や評価について、担当である国際教育交流センターの阿部仁(あべ・じん)准教授が本紙の取材に応じてくれた。

 2012年度から商学部で開講されていたPACE(Practical Applications for Communicative English)が全学部で初年次必修化したのは2017年度。4学期制への移行及び卒業要件の見直しの際に、実践的な英語コミュニケーション科目の必修単位数が2単位から8単位に増加した 。そこでPACEは、少人数クラスの双方向型授業を通して初年次の英語スキル教育を担う中心的プログラムとして位置づけられたのである。当科目では、海外留学や海外調査などに向けた、英語による発表や討論といった学術的なコミュニケーション能力向上が目的とされる。阿部准教授は、それらのプログラムへの参加には、PACEが非常に重要な意味を持っていると考える。

 PACEは今年度、全学部必修となってから6年目を迎えたが、教員側からの評価はどうだろう。阿部准教授は、全学部での必修化以来、派遣留学者数やTOEFLの平均点の上昇といった成果があると述べ、PACE教育を高く評価している。一方で、学生からは「課題が多い」などの苦労の声が多く寄せられるという。英語4技能スキルの向上のために、通年週2回の毎授業で授業時間の2倍にあたる210分もの予復習が要求されているためである。これに対し、阿部准教授は「海外の大学の授業に比べたら、これでも軽い。グローバルスタンダードにはまだまだ足りていないと思う」と、学生にさらなる研さんを期待する。

 また、コロナ禍に見舞われた2020年度は、ごく一部の期間を除き年間を通して、オンライン会議システムZOOMを用いた授業が行われた。当時のオンライン形態ゆえのメリットを尋ねると、教室に比べて雑音が少ないために、講師が学生の英語をよりチェックできたという。加えて、対面で授業が行われている現在に対し、当時はマスクなしで生徒や講師の顔を確認できたため、口元が重要な発音の練習がより効果的にできた。しかしその反面、講師の目が行き届かないブレイクアウトルームでのグループワークでは日本語を話す学生も一定数いたと振り返る。

 最後に、現在進行形でPACEを受講している学部1年生に向けてのメッセージを求めると「これからはますます日本から出て、世界で勝負する時代です」と語る阿部准教授。そして「留学、国際学生宿舎一橋寮、交流学生との言語交流など、大学には様々なグローバル教育の機会があり、やれることはまだまだたくさんあると思います」と励ましと期待を込めたメッセージを送った。

PACEで使用されている教科書