THE IKKYO SHIMBUN

社会学部佐藤圭一ゼミが研究発表 コロナ禍は大学生活をどう変えた?

 5月17日、『一橋大生のコロナ禍における生活と友人関係に関するアンケート』に関する分析報告会が行われた。本調査は、社会学部の佐藤圭一ゼミにより昨年の9月22日から10月21日まで行われ、516名からの回答が集まった。報告会では、ゼミ生5名がそれぞれのテーマに基づいた分析結果を発表した。報告会の様子を取材し、佐藤ゼミの方々にお話を伺った。

 ゼミ生の一人である大八木慶彰さん(社4)は、大学生の目的意識や社会観が、所属するコミュニティーによってどのような影響を受けるかについて発表した。

 まず、友人の数が多い人ほど、一つの核となるコミュニティーに所属し、そこで密度の高い友人関係を築いている傾向にあった。友人関係の形成においては、複数のコミュニティーに適度に関わるより、単一のグループと密に関わる方が有効であるという点が注目される。第二に、友人が多い人ほど、人生や社会について肯定的な回答をする傾向にあった。これは、コミュニティーに所属することでストレスが軽減することを示していると考えられる。第三に、友人が多く、緊密な人間関係を有している人は、現在志向で、アルバイトや課外活動など他者と関わることを重視する傾向にあった。コミュニティーに参加することで将来への不安が緩和され、今を楽しむ行為を選択するようになることが原因だとみられている。


 報告会を終え、本調査の狙いや意義について、参加したゼミ生と佐藤先生にお話を伺った。

 まずは大八木さんに、本調査の狙いについて聞いた。コロナ禍で社会全体のオンライン化が進み、大学生も大きな影響を受けた。大学が持つ授業以外の機能はオンライン化できないという認識の下、コロナ禍が大学生活に与えた影響を把握することが、本調査の狙いだったという。

 大八木さんは、それぞれのテーマに即した質問を考えることに苦労したとも話す。例えば、仲の良い友人の数を尋ねようとしても、仲が良いかどうかの基準は人によってそれぞれだ。行き会った時に挨拶を交わすようになれば友人という意見もあれば、定期的に一緒に出掛けるまでにならなければ友人でないという意見もあるだろう。本調査は、友人関係という基準があいまいなテーマを扱うことから、調査者側の意図を正確に伝えられるよう配慮したという。

 杉山凛太朗さん(社4)は、自由記述欄の回答率が非常に高かったことに驚いたという。ここから本学学生の問題意識の高さを再認識するとともに、コロナ禍が大学生活に与えている影響の大きさを実感したと振り返った。

 最後に、本調査の意義について佐藤圭一先生に聞いた。先生によると、大学生の孤独感の高まりが叫ばれているものの、そのメカニズムや規模は具体的には把握されていない。そのため、コロナ禍とそれに伴うオンライン化が大学生の友人関係に与えた影響について実証的に示した本調査には、大きな意義があるとのことだ。また、大学生活における友人関係の重要性にスポットを当てることもできた。大学は学問研究の場であると同時に人間関係形成の場としての側面を有している。先生は、コロナ禍を機に、大学の関係形成機能の意義を問い直すことができ、とても貴重だったと振り返った。

 コロナ禍の生活もすでに三年目を迎え、コロナありきの生活が当たり前になりつつある。そんな中、本調査は、大学生活と友人形成について見つめ直す貴重な機会となった。