【キミも一橋をとびだせ!】四大学連合複合領域コース 履修者の意外な本音

 一橋の開講科目では物足りない。様々な言語に触れてみたい。理系的な視点からも学んでみたい。中学のころ、理科も面白かった。そんな人におすすめなのが「四大学連合 複合領域コース」だ。履修生や本学担当者に話を聞き、その魅力や苦労を探った。


 四大学連合には、東京医科歯科大学、東京外国語大学、東京工業大学、一橋大学が加盟している。四大学連合憲章によると、異なる分野を専門とする四大学が、独立を保ちつつ連携を図ることで、これまでの高等教育では達成できなかった新しい人材の育成と、学際領域、複合領域の研究教育の更なる推進を目指している。この目的を達成するために設定されたのが、各大学の特色ある授業科目を提供する複合領域コースだ。一橋の学生が履修できるコースは、「海外協力コース」「総合生命科学コース」「生活空間研究コース」「科学技術と知的財産コース」「技術と経営コース」「文理総合コース」「医療・介護・経済コース」の7つ。個々の大学では対応できない講義を四大学連合で集め、コースとして整えてあるため、学際分野に関心があり、幅広い知識を習得したい学生にはうってつけだ。例えば、4大学間共通コースである「海外協力コース」は、多様なバックグラウンドを持つ学生が、他分野の素養と海外に対する広い視野、見識を身につけ、グローバル化社会で活躍することを目指している。

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 実際に複合領域コースを履修している学生に話を聞いた。東工大との共通コースである「技術と経営コース」を履修している髙津美央梨さん(商2)は、専門である経営だけでなく、それに関わる技術系分野にも興味があり、志望した。授業がオンライン中心である今なら、時間に融通が利き履修しやすいと感じたことも、履修の後押しとなった。東工大では、工場の生産管理や生産工程の効率化などを扱う授業を履修した。「授業は期待以上で面白かった。発展科目で不安だったが、説明もスライドも丁寧で分かりやすかった」と満足げに話した。
「数学や経済学を、文系大学である一橋の授業とは異なる視点から学び直したい」と話すのは、東工大との共通コースである「文理総合コース」を履修する早川綾香さん(経2)。髙津さん同様、授業では、前提知識であっても省略せず丁寧に繰り返し説明してくれ、分かりやすかったという。
 山崎栞さん(社2)は、東京医科歯科大学との共通コース「医療・介護・経済コース」を履修している。医学部の授業を受けてみたかったこと、政策にも興味があり、それらを結び付けて学んでみたいと考えたことから履修を決めた。夏学期から、医療へのAIやビッグデータの活用の入門分野を学んでいる。山崎さん自身は医学の専門知識はなく、遺伝子についてなど細かい機構や仕組みは分からないが、1年次用の教養科目で履修しやすかったという。

 複合領域コースの特徴として、履修する他大学の授業はCAP制に含まれないこと、自由選択の単位として扱われ、E/F評価であることが挙げられる。話を聞いた3人の履修生も「CAP、GPAに入らないから気が楽」と口をそろえた。3人が、得意不得意ではなく興味・関心だけで思い切って履修できたのは、この仕組みのおかげだといえる。

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 一方で、履修生に共通した苦労も見えてきた。まず、多くの授業がZoomで行われているため、他大学の学生とのつながりを得るのは困難なようだ。対面授業であったり、知り合いがいたりすれば気軽に質問しやすいが、オンラインかつ他大学の授業であり、「分からないことがあっても直接先生に連絡するしかない」(髙津さん)という。山崎さんも「同じ授業を取っている友達がおらず誰にも相談できない」と不安を口にした。

 また、授業時間が違うことも、他大学での授業を取る上でハードルとなっている。授業時間の違いから、他大学で1コマ取ろうとすると、一橋で2コマ取れなくなることがある。例えば、東工大の5・6限(東工大での2コマは一橋での1コマに相当する)は14時20分から16時で、この時間に開講されている授業を履修しようとすると、一橋で3・4限の2コマが埋まってしまう。さらに、医学部の授業は「月曜から金曜までのすべての1限で授業があり週5コマ」、一橋のシラバスに則すと「月1火1水1木1金1」というように、一橋の学生からするとイレギュラーなこともある。山崎さんは「時間割の仕組みが違って、履修しにくい」と嘆いた。

 さらに、複合領域コースでは、所属大学の科目を履修しながら、並行して他大学の科目などの設置科目を履修しなければならない。本学担当者も「コース履修希望者は、コース担当教官や学科の先生とよく相談の上、学習計画を立ててから履修することを強く勧めます」と念を押している。

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 最後に、3人の履修生に今後の抱負を語ってもらった。東工大との共通コースを取る髙津さんと早川さんは「一橋にはない理系的な視点から学ぶ授業をさらに履修したい」という。東京医科歯科大学との共通コースを取る山崎さんは「GPAに入らないから、成績を気にしすぎず、医学部ならではの授業にもチャレンジしたい」と意欲を示した。

 本学では、例年12月ごろ、翌年度2年次以上となる学生向けに国内単位互換制度の説明会が実施され、複合領域コースの詳細も説明がある予定だ。本学担当者は「少しでも興味がある方は奮ってご参加ください」とコメントを寄せた。