「このキャップは伊右衛門茶のやつですね。普通より薄いので変化のある球になります」「このキャップは厚みがあって投げやすいんですよ」。それぞれのペットボトルキャップの特徴を話す言葉によどみはない。首都圏で初めてキャップ投げを行うサークルを設立し、現在は代表を務める。キャップとキャプテンを掛けた自称は「キャップテン」だ。
キャップ投げとはペットボトルキャップを球に見立てた、野球のようなスポーツだ。背の低いフェンスをコート内に設置し、それを超えないように守備の選手2人が守る。キャップとプラスチック製のバットがあれば始めることのできる手軽さが、その魅力だ。
キャップ投げに出会ったのは中学3年生のときだ。「キャップを飛ばすことができるらしい」と友人から聞いて以来、それに打ち込んだ。始業40分前に到着するスクールバスに乗り、朝礼までの時間を練習にあてる。高校でもキャップ投げを続けた。模試ではその後の練習を楽しみに解答用紙を埋める。黒板消しや風船の空気入れなど、身近な道具をバット代わりに練習した。大学進学後は早くも入学式前に新入生にクラブ設立を呼び掛け、今は40人が所属する団体を束ねる。
活動を続ける上で壁となったのは、試合に使用する体育館を借りることだ。知名度が低く競技への理解が十分に得られていないため、危険性を理由に使用をすげなく断られることもあった。最初にその壁にぶつかったのは高校3年生のとき。京都大学との初対外試合、そして高校のメンバーとの最後の試合だった。試合場所を用意できないという思わぬ壁にぶつかり、地元の体育館職員の前で泣いた。「(スーパーマリオブラザーズの)1の1で、ノコノコにぶつかって死んだみたいな」出来事だった。その悔しさから「キャップ投げがスポーツとして広まること」を目標に掲げる。一橋祭でキャップを使った射的を行うなどの普及活動と共に、来春は新入生獲得にも力を入れる予定だ。