THE IKKYO SHIMBUN

くにたちこどものさつえい記 中高生と歩く国立

疾走する南武線の電車を撮影

 「手だけ伸ばして下から撮ったら面白いかもしれないよ」。中高生3人が南武線の谷保駅から矢川駅まで歩きながら、踏切の音を合図にビデオカメラを構える。高架化された中央線では見ることのできない、電車が住宅街や畑の中を駆け抜ける風景を撮影している。

 国立市の子ども家庭部児童青少年課を中心に、国立市に在住・通学している中高生が国立市のPR映像を制作する「くにたちCMスタッフ」。もともとは国立市内で特にテーマを定めずに撮影していた。

 現在は、市内の歴史や自然を詠んだ「くにたちカルタ」に関わる動画の撮影が主な活動だ。スマートフォンをカルタにかざした際にその句に合わせて流れる映像や、カルタ大会のPR映像を制作している。冒頭で彼らが撮影していたのは、「谷保・矢川 走る電車は 南武線」の句に使用する動画だ。

宝船を撮影するCMスタッフ

 取材当日は、南武線沿いの他に、「農業展 高くつみあげ 宝船」「ぬしはだれ 城山の中 虫さがし」の句のために国立市農業まつりに展示されている野菜が積み上げられた宝船と、城山公園内の雑木林も撮影した。城山公園では開催されていたイベントに飛び入り参加をし、大根をお土産にもらってきた。

 映像の編集も彼ら自身で行う。宝船の解体シーンの動画を確認しながら「逆再生して早送りにしたら動画として面白いんじゃないか」など様々なアイデアを出す。児童青少年課の高野宏さんは、「のんびり楽しく、自分たちで考えながら、編集してもらえればそれで良い」と彼らを見守る。活動に中学生の頃から参加している高校1年の小出悠記人(ゆきと)さんは「決められた時間の作品を作るために、撮った動画を切り取ったりつないだり、色々と工夫できるのが楽しい」と動画制作の面白さを語る。

 生活しているだけでは分からない国立市に出会うこともある。中学2年の松本知華(ちか)さんは、「ずっと国立市に住んでいたけど気付かなかった、自然の豊かさや市のやっていることを知ることができた」と話す。

 高野さんは子どもたちに、国立市を知るだけでなく、地域の人との繋がりも広げていってほしいと考えている。児童青少年課と一橋大のサークル(国立あかるくらぶ)が協働して開催しているローカルセッションというイベントは、中高生と大学生の交流を可能にしている。高野さんは、「彼らにとって大人や大学生との関わりは刺激的な経験になると思う」と語った。

 学校や通学路から一歩踏み出し、地域の様子を見聞きして、自分たちなりに発信している。彼らは、生の経験を通じて、楽しみながらまちの一員になっていくのだろう。