THE IKKYO SHIMBUN

ジラフ社長 麻生輝明氏の視座

「ステレオタイプ」という言葉は、どちらかと言えばマイナスイメージのある表現だ。しかし、多くの場合、ステレオタイプに基づいた選択をすることは無難で、安全な、そして賢明な判断である。

ステレオタイプでない選択をするのは、覚悟がいる。人生を左右しかねない就職という場面であれば、尚更だ。

そうした覚悟と気概を持った若き起業家が、本学OB(平29商)の麻生輝明氏だ。買取価格比較サイト「ヒカカク」を運営する(株)ジラフを創業し、現在も社長を務めている。新進気鋭の起業家として、彼は経営というものを、そして経営者としての自らをどう見るのか。麻生氏に話を聞いた。

――将来的に自らの手で企業を経営することを、いつ頃から考えていたのですか?

中学生くらいから考えていました。ただ、その時点では起業というのは、大企業への就職等と並んで、一つの選択肢に過ぎませんでした。

――大学に入学してからそういった点についてどれぐらい意識していたのですか?

実は一年生からあるベンチャー企業でずっとインターンをしていました。早く実際のビジネスの世界を知りたいという純粋な好奇心と、大学生活において何か全力で頑張ることを見つけたかった、というのがありますね。実際に事業に触れることで、経営学の理解も大幅に深まりましたし。

――起業という選択肢を、実行に移そうと決めたのはいつですか?

就活後ですね。ベンチャーキャピタルの会社(ベンチャー企業へ投資をする会社)に内定をもらった後、擬似的に起業をしたんです。投資家として、投資対象である企業の経営者の視点もわかっておけば、仕事上でも有利になるだろうと考えたんです。そうして始めた事業を続けるうちに、これをずっとやっていく方が自分にとって良いのではないかと思い、内定を辞退して今に至ります。

――大学で学んだことは、経営にどう生きていますか?

研究を通じて論理的思考の訓練ができたことと、僕は経済学部のゼミにも入ってゲーム理論を学んでいたので、戦争や就職面接などの、幅広いジャンルの事象を数値化して考えたり、結果から逆算したりするその視点は、現在の経営上の意思決定にも役立っていますね。

――意思決定においてどんなことを意識していますか?

これは経営上のものに限らないんですけど、できるだけ他の人と違うことを選択している感じですかね。僕、希少性ってめちゃくちゃ大事だと思うんですよ。

――大学を出てすぐ起業したということ自体も、麻生さん自身の希少性ですか?

そうかもしれませんし、僕の場合は商学部での学習を通じて知識のインプットがされていたんです。若くして起業している人の中には、経営学を学習しているケースが少ないんですよ。だから、その点においても、僕には希少性があるかも知れませんね。

――麻生さんなりに、最後に一橋生へ何か伝えたいことはありますか?

一橋生に限らず大半の人って、自分が本当にやりたいことよりも、無難で確実なことを選択し勝ちなんですよね。やらずに諦めている、っていうか。特に若い人の場合、それは少しもったいないかな、という気がしますね。自分の声を素直に聞いて、楽観的にやってみる。人生のジェットコースターに乗ってみる。そういう風に、出来るなら大きなチャレンジをして欲しいです。

取材を終えて、記者もステレオタイプな物の見方に強く囚われていたことに気付かされた。単調な人生のレールの上を走る列車を降り、ジェットコースターに乗ってみるべきなのかもしれない。


 

麻生輝明(あそう・てるあき)

平成29年一橋大学商学部卒業。在学中に、利用者が売りたいものの最高買取価格を調べることのできるサービス「ヒカカク!」を創始。同サービスの運営会社㈱ジラフの創業者兼社長。(同社HP:jiraffe.co.jp/)