本学にある42の運動系部活が所属する「一橋大学体育会」において、会則が十分に守られていないという疑惑が浮上している。そこで本紙は、体育会総務委員会の高羽瑞輝委員長(法4)に取材し、疑惑の真相を問うた。話を聞く中で、コロナ禍を経た体育会の現状や課題も浮き彫りとなった。
問題の焦点となっている「一橋大学体育会会則」とは、本学に登録されている各運動系部活(サークルは除く)が所属する体育会について、その構成や業務などを規定したものだ。会則によれば、本会はさまざまな運動系部活の活動を促進することで、本学の発展に寄与することを目的とし、会員は本学学生であるとされている。そのうえで、本会の最高決議機関として幹事会、最高執行機関として総務委員会を置くことを定めている。
しかし本紙の調査で、幹事会やその代表者である幹事長は現在、存在しないことがわかった。会則では、第一に幹事会を構成する38の団体が、副将またはそれに相当する者を、幹事として出すことを義務付けている(第15条)。第二に、幹事長は原則として、立候補による投票で決定するとされている(第10条)。第三に、休暇中を除く毎月第一水曜日に定例幹事会を開催することも明記されている(第11条)。幹事会や幹事長が存在しないとなると、少なくとも以上3つの規定に抵触する可能性が高い。
高羽委員長は、こうした状況を事実と認めたうえで、自身が総務委員会に入った時点で、すでに幹事会は消滅していたと説明する。そのため「いつからこの状態が続いているのか、明確な時期はわからない」としながらも、幹事会がなくなった背景に、新型コロナウイルスによる影響があったことは聞いているという。
コロナ禍以前には、体育会が旧三商大戦(本学、大阪公立大、神戸大の3大学間での交流戦)を取り仕切っていたが、新型コロナウイルスの流行によって、一時的に交流が途絶えた。現在は再開されているものの、コロナ禍後は各部活がそれぞれ独自に開催している。高羽委員長は、旧三商大戦の主催という大きな仕事がなくなったため、幹事会が消滅したのではないかと推測する。
ただし執行機関である総務委員会は存続しており、委員長や会計担当などに加え、ほぼすべての部活から一人ずつが委員として参加している。現在の業務としては主に、大学側から体育会への物品支給について、各部活への配分割合を決定したり、新入生向けに『一橋スポーツ』という情報誌を発行したりしているという。
幹事会を復活させるなど、体育会をコロナ禍前の状態に戻す考えはないかと尋ねたところ、高羽委員長は難しいとの認識を示した。旧三商大戦が各部活で開催されていることに加え、東体育館、小平国際キャンパスなど、活動場所ごとに部活やサークルが集まって自治組織ができている現在、かつてのような運動系部活全体をまとめる強大な組織は必要ないのではないかと説明する。
そのうえで、会則を現状に合った形に変更することは検討しているという。会則の改正には、全幹事の3分の1以上、もしくは総務委員会の提案に基づき、全幹事の3分の2以上の同意が必要とされている(第34条)が、幹事会が存在しないため、総務委員会が主体となって改正草案を作成する方向だ。
また会則の問題とは別に、過去に不適切な会計管理があったことも判明したため、学生支援課に報告・相談のうえ、新たな銀行口座の開設手続きを進めているという。以前は会計担当が個人の口座で管理する仕組みだったが、よりオープンな形にして、収支を適切に管理するねらいだ。
コロナ禍を経て活動形態が大きく変化した組織は少なからずあり、体育会もそのうちの一つといえる。高羽委員長は、今はコロナ禍でゼロになった組織体制を立て直す段階であると述べたうえで、最後に「今年の総務委員会は、周りからは何もやっていないようにみえるかもしれない。しかし新しいことを始めるにはベースが必要。まずはそのベース作りを進めていければ」と語ってくれた。