【報道】司法試験合格率 3年ぶり全国首位に

司法 先月8日、法務省が司法試験の合格状況を発表した。本学法科大学院からは142人の受験者中、79人が合格。合格率は55・63%と、昨年の47・06%から8・57㌽増加し、3年ぶりに全法科大学院中の首位に返り咲いた。

 79人の合格者の内訳は、法学既修者コース修了者が58人(合格率63・04%)、法学未修者コース修了者が21人(同42・00%)だった。既修者コー スの合格率は全法科大学院中4位にとどまったものの、未修者コースでは1位となった。既修者コースは2年間の課程で、入学試験も法学の知識を前提として出 題される一方、未修者コースは主に法学部以外の学部卒業者や社会人経験者などを対象とした3年間の課程で、試験でも法学の知識は問われない。

 法科大学院長の滝沢昌彦教授は「一位は久々だな、という思い。(一学年の定員が85人という)中規模校であることが、高合格率を維持できている理由だろう」と語った。

 司法試験全体では、8016人が受験し合格者は1850人。合格率は23・08%だった。また、本来の受験資格である法科大学院修了を経なくても司法試験 を受験できる予備試験を利用した受験者は 301人で、うち186人が合格した。合格率は61・79%に上り、3年前に予備試験利用者の受験が始まって以来、全法科大学院を超える合格率を維持して いる。

◇法科大学院制度岐路に高まる予備試験人気

 現在、法科大学院は再編・選別の渦中にある。本学では、訴訟実務を取り入れた即戦力人財育成の取り組みや、学部生への進学促進プログラムなどが評価さ れ、今年度の国からの補助金が前年度比3割増となった。ある学生は「実務の授業などは、司法試験に受かった後で生きてくると思う」と評価する。また、自主 ゼミが盛んで「互いに高め合う環境が整っている」と、教員から学生までが口をそろえる。

 対照的に、合格率の低迷や定員割れ、補助金の大幅カット に苦しむ大学院も多い。閉校も相次ぎ、04年の法科大学院制度開始当初には74校だったが、来年度以降も募集を続けるのは50校を下回る。滝沢教授は、 「74校も認可されたのだから、ある意味いまの(再編)騒ぎは当然でしょう」と話す。

 そんな中、法曹志望者は多額の費用に悩まされている。比較 的安価な国立大でも半期の学費は約40万円、私立大では50~70万円となる。奨学金の充実に力を入れる大学も多いが、学生の経済状況は厳しい。未修者 コース2年のAさんは、授業料半額免除を受けつつ、奨学金とアルバイトで生計を立てる。2年に進級して授業が発展的な内容になると、予習や復習などにかか る時間が増えたため、現在は長期休み中のみで集中的にアルバイトをしているという。もし授業料半額免除を受けられなくなれば、アルバイトを増やさなくては ならず、不安だと話す。

 また、司法試験合格者全員に課される1年の実務研修が、4年前から無給となった。副業禁止のため、ほとんどの合格者が無 利子の資金貸与制度を利用しているが、基本額の貸与でも総額は300万円弱となる。法科大学院修了の翌年度に司法試験へ合格した場合でも、法曹として働き 始められる年齢は最も若くて26歳。そこへ、よほどの経済的余裕がない限り、社会に出ると同時に数百万円の「借金」がのしかかる。「司法の民主化」の一環 として導入された法科大学院制度だが、「一発勝負」だった旧司法試験時代よりも敷居が高くなったことは否めない。

 こうした中、学部在学 中からも受験可能で、法科大学院をパスできる予備試験が人気を集めている。大学院に通う場合と比べ、費用も時間もかからないためだ。既修者コース2年のB さんは、学部4年で予備試験を受けていた。大学院に進んだのは「予備試験に受からなかったから。好きで来たわけではない」と言い切る。

 予備試験 人気は根強い。予備試験合格を機に大学院を中退する事例も後を絶たず、本学でも「毎年5人以上はいる」(滝沢教授)という。Bさんは進学後も予備試験を受 験しているが、中退するかは決めていない。「院にいるメリットはある。つてやコネクションもできる」。Aさんも予備試験は受けるが、中退は考えていない。 「現役の法曹が講師となる実務科目などもあり、中退するのはもったいない」。ただ、司法試験対策に集中したい場合、大学院の授業の予習や準備は重荷とな る。別の学生は、予備試験に受かったら「司法試験対策に集中するため中退する」と断言した。

 大手予備校・伊藤塾の伊藤真塾長も予備試験の利用を 推す。「(学部と大学院で)6年も法律だけ勉強するより、別の資格の勉強をしたり、世界を見たりするのに時間を使ったほうがいい」。ただ、Aさんらが言う ように、大学院にも魅力はある。伊藤塾長もそのことは認めた上で「制度は使い方次第。自分の意思で選択して、主体的に学ぶことができればいいのでは」と話 した。

【お詫び】
10月16日発行の一橋新聞10月号(11○○号)に掲載された、Aさんに関する説明に誤りがありました。本記事は訂正して掲載しています。