本学は来年度以降、学部入学者選抜(一般選抜)の成績情報を受験者に提供する際、総合得点と合わせて科目別得点も開示する方向で検討を開始していることが分かった。個人情報の保護に関する法律(以下、個人情報保護法)に基づく科目別得点開示を利用する学生が増える中、総合得点のみを開示する現行制度の見直しを迫られた形だ。本紙では、今回の見直しの経緯について本学担当者に取材するとともに、科目別得点開示を受けた学生たちの声にも迫った。
本学担当者によれば、受験者に提供する入学者選抜成績の情報の範囲は、各大学が定めるものとされており、本学ではこれまで総合得点のみの開示としてきた。実際に、05年に社団法人国立大学協会(当時)が改正した「国立大学の入試情報開示に関する基本的な考え方」は、科目別得点を「受験者の利益を考え開示すべき情報」としながらも、開示が機械的な受験技術の後押しにつながることなどを危惧し、開示するか否かを各大学の合理的裁量に委ねている。このため各大学で対応が分かれており、東京大や京都大などは、科目別得点も開示している。
ただし個人情報保護法に基づき、所定の手続きを行えば、本学でも科目別得点の開示を受けることはできる。なお、開示を受けるには請求から1か月程度を要し、手数料(300円)がかかる。
今年度はX(旧Twitter)を中心に、科目別得点開示の請求方法が広まり、手続きを行う人が急増した。本学担当者によると、19年度から21年度までほとんどなかった請求件数は、昨年度17件に増え、さらに今年度は7月24日時点で、344件にまで上ったという。こうした変化を踏まえて、本学でも科目別得点を開示する方向で、検討を開始する運びとなったという。
実際に個人情報保護法に基づき、科目別得点の開示を受けた学生らからは、Xを使用していなければ開示できることすら気がつかなかったとの指摘や、開示に際して迂遠な手続きや手数料の負担を求められることを疑問視する声が上がっている。また、総合順位や科目別順位などさらに詳細な情報の開示を求める声も聞かれた。一方で、前出の「国立大学の入試情報開示に関する基本的な考え方」が指摘するように、採点済みの答案など、公開することで採点者が批判に対して萎縮し、適正な採点に影響を及ぼすと考えられる情報も存在する。大学には、試験の公正さと透明性とを調和させた新たな制度の模索が求められている。