三菱地所と共同研究契約締結 東本館に交流拠点設置

 3月17日、本学はプレスリリースにて、三菱地所との間で「データ駆動型社会 (*注1)における空間の価値創造に関する共同研究契約」を締結したと発表した。また4月19日には、学外報道関係者向けの記者会見及び、ソーシャル・デ―タサイエンス(以下、SDS)学部・研究科教員らによるトークセッションが行われた。
 本共同研究契約は、本年4月のSDS創設 と連動するもの。SDSが学部3年生以上を対象に開講予定のPBL演習(*注2)にて三菱地所と協働するほか、東本館に交流拠点を整備し、学生発スタートアップの促進を図る。契約期間は5年だが、随時更新して継続的なプロジェクト運営を目指す方針だ。
 4月19日の記者会見では、中野聡学長、三菱地所の中島篤執行役社長    らが登壇した。中野学長は、時代に合わせて社会問題    を解決できる人材を育成することが本学の使命であるとした上で、「三菱地所には、日々集積される膨大なデータと、東京丸の内エリアなどでの多様な人々が交流できる拠点づくりのノウハウがあり、一橋大学にとって理想的なパートナーだ」として、本共同研究契約の意義を強調した。
 本共同研究契約に関連するプロジェクトのうち特に注目されるのが、本学国立キャンパス東本館に開設予定の交流拠点だ。東本館は1929年に建設され、兼松講堂とともに国の登録有形文化財に指定されている。新設される拠点は、東本館のロマネスク調建築の要素と、現代的な要素の融合をコンセプトにしたデザインが特徴。東本館全体が大幅に改装され、会話や交流のためのコモンエリア、研究のためのラボラトリーエリア、PBL演習などで使用予定のラウンジエリアが設けられる予定だ。

1階に設置予定の、コモンエリアの完成予想図。開放感を重視し、カフェスペースを設置するなど、利用者の会話や交流を促進するようなデザインになっている。(三菱地所㈱提供)。

 本交流拠点は、学生、教員、民間企業との関わりを密にし、学生発のスタートアップにつなげることを目的とする。ブースごとの仕切りを取り払い、研究拠点となるラボラトリーエリアのすぐ近くにSDS教員の研究室を置くなど、空間設計の面からも利用者の緊密なコミュニケーションを後押しする。さらに、実際に起業に着手したスピーカーを招いてのイベントや、三菱地所が提携する他大学との協働なども検討しているという。
 本拠点の設置目的について、記者会見後のトークセッションに登壇した七丈直弘教授(本学SDS)は「スタートアップの夢を現実にするには、教員・民間企業・他の学生とのコミュニケーションを通して、一般には得られない情報や人的ネットワークを手に入れることが必要。多様な人々の偶発的 出逢いを促し、学生に様々な可能性を提示できるような環境づくりを目指したい」と語った。また、同じくスピーカーを務めた檜山敦教授(本学SDS)は、本拠点のさらなる活用法として、「自分の作ったアプリケーションやVRシステムなどをすぐに試すことのできる、『リビング・ラボラトリー(生きた研究所)』としても活用したい」と述べ、自身の研究の観点から本拠点への期待を語った。
 本交流拠点は、2023年9月より稼働予定。SDS以外の学生が利用できるかは未定だが、本拠点により本学全体に新たな風が吹くことを期待したい。

4月19日の記者会見で握手を交わす三菱地所の中島篤執行役社長(右)と中野聡学長(左)。