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TEDXHitotsubashiU開催 「再出発」に向けた「憩いの場」

 2月13日、TEDxHitotsubashiUが開催された。第3回となる今回は、新型コロナウイルスの影響で完全オンラインでの開催となった。イベントを終えて、運営チーム代表の澤野結衣さん(イベント当時法4)と、登壇者担当チームリーダーの中野佑紀さん(イベント当時経3)に話を聞いた。


 TEDは、「価値ある考えを広める(Ideas worth spreading)」を理念とする非営利団体。著名な登壇者を招いて、幅広いジャンルのプレゼンテーションイベントを開催している。TEDxは、TED本体からライセンスを交付された地域や大学などが独自に運営するイベントで、2009年のTEDxUTokyoを皮切りに、日本各所で開催されている。本学でも、2018年、有志学生によりスタートした。
 今回のテーマは「RESTart」。社会では、効率的・合理的に行動し、大学受験や就職活動、出世競争に勝利してより高みを目指すことが是とされており、ほとんどの人が多かれ少なかれそれを意識している。そんな社会規範が人々の選択の幅を狭め、生きづらさを生んでいるのではないか。そうした問題意識から今回のテーマが生まれたという。自分が置かれている状況やストレスからいったん離れ、休憩(REST)してもらいたい。そして、各登壇者のプレゼンテーションを通して自分なりに納得できる生き方のアイデアを見つけ、再出発(restart)のヒントにしてほしい。本イベントには、そんな思いが込められている。

イベント運営メンバーのみなさん
(感染対策を十分にとったうえで、撮影時のみマスクを外しています)

 イベントは二部構成。前半では、5人の登壇者のプレゼンテーションが動画化され、YouTubeでプレミア公開された。本学学生から社会人まで、多様な経歴を持つ人々が登壇し、自身の人生経験をもとに、魅力的なスピーチで参加者の心をひきつけた。登壇者の一人である坂根千里さん(イベント当時社4)は、「ゲストハウスここたまや」をオープンし、一年間休学してカンボジアでホテル経営のインターンをするなど、在学中から活発に活動してきた。その一方で、定期的に気持ちがふさがって何もできなくなる期間があったという。心との付き合い方を模索した末、自分を支えているのは他者とのささやかなコミュニケーションだと気付いた。中でも魅力的だったのがスナックでのコミュニケーション。初めて会う人と適度な距離感で行う交流が心の支えになった。卒業後はアルバイト先のスナックを継ぐという坂根さん。来店者の日常を支える空間をつくりたいという目標を語った。
 イベント後半では、Coffee chatと題し、参加者と登壇者のZoom交流会が行われた。参加者は興味のある登壇者のトークルームに行き、様々なテーマでざっくばらんに意見を交換した。また交流の合間には協賛企業であるパクテラ・コンサルティング株式会社とアプコグループジャパン株式会社によるワークショップも行われた。
澤野さんは、「オンラインイベントだからこその価値を見つけ、それを高めるための工夫をしてきました」と話す。例えばプレゼンテーション動画の画面作り。TEDスピーチでは、大きなロゴのオブジェとともに登壇者がスポットライトに照らされることで独特の臨場感が生まれる。画面上でこの非日常感を鮮明に表現すべく、音響や照明、画角にこだわった。イントロや画面転換も含めて、対面開催では味わえない魅力の詰まった動画の作成を目指したという。

スピーチ動画撮影の様子。このために一眼レフなど本格的な機材をそろえたという。

 また、オンラインイベントの難点として相互性のあるコミュニケーションを作りにくいことがある。それを逆手に取り、顔出しや発言をしたい人も、ただ聞いていたいだけの人も参加できるような、居心地の良い空間を目指した。中野さんによると、そのために大事にしたことが二つあるという。一つは参加者が発言しやすい雰囲気づくりだ。交流会の前にアイスブレイクの時間を設けたほか、運営メンバーがファシリテーターとして親しみやすい空気感を作り上げた。二点目は登壇者の個性を尊重すること。各トークルームのセッション内容を画一化せず、登壇者と運営側の担当者が二人三脚で内容を練り上げた。


 最後に、澤野さんにイベントを終えての感想を聞いた。イベント準備をしてきたこの一年は「長いようで短いような、不思議な時間」だったという。開催までに、様々な困難があった。テーマ決めのために何週間もミーティングを重ねた。新型コロナウイルス感染症の影響で先の見通しが立たず、オンラインでの開催を余儀なくされた。学内施設での撮影ができず、外部で利用できる場所を探した。「ほかにも多くの困難がありましたが、それでも、よりよいイベントを創るという目標のために仲間たちと本気で話し合い、考え抜いた時間はとても充実しており、私にとって大切な思い出となりました」。澤野さんは、晴れやかに語ってくれた。
 様々な制約の中、それを魅力に昇華させたTEDxHitotsubashiU。澤野さんは、今年の経験をもとに、来年後輩たちがより良いイベントを創ってくれればうれしい、と話す。バトンは、次の世代に渡される。