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集中講義でビジネスコンテスト

 冬学期の集中講義「アントレプレナーシップ」の受講者によるビジネスコンテストが、1月28日にZOOM上で行われた。事前に講義参加者約140名全員が提出したプランの中から、審査員が選んだ20名が発表した。「アントレプレナーシップ」の一環として、ビジネスコンテストが行われるのは初めての試み。20名の中から審査員によって3人、講義参加者の投票で4人の合計7人が優秀な発表として選ばれた。審査員は講義を担当する江川雅子特任教授(経営管理研究科)に加え、Tomy.K代表・株式会社ACCESS共同創業者の鎌田富久さんと株式会社オデッセイコミュニケーションズ代表取締役社長の出張勝也(84年卒)さんが務めた。

 審査員によって優秀賞に選ばれた3人の作品を、登壇順で紹介する。
 藤井祟央(経2)さんが紹介するのは、シェアサイクリングのプラットホーム「WE CAN CHOOSE」だ。
 このビジネスプランの最大の目的は、日本人特有の気候変動対策への負担意識をなくすこと。藤井さんによると、気候変動対策が生活の質を高めると考えている世界と違い、日本人は生活を脅かすネガティブなものだと捉えているそうだ。「WE CAN CHOOSE」は、乱立しているシェアサイクリングサービスの情報を統合することで、環境に優しい自転車を使った移動を選択肢に加える。徒歩、電車も含めたルート検索ができ、所要時間だけでなくCO2排出量も表示することで、利用者の気候変動対策に対する意識の改革をねらう。

 手塚智大さん(経2)が発表したのは飲食予約サービス「ラクリス」。「ラクリス」の特徴は、従来の飲食サービスとは異なり、企業を絡めることによって、飲食店とユーザーの負担を軽くしたことだ。「Go to Eat」もあり、飲食予約サービスは成長しているが、飲食店は予約サービスに多大な費用を払うなど、「搾取」されていると手塚さんは指摘する。飲食店で働いた経験のある手塚さんは、企業にとって入れ替わりの激しい飲食店相手に営業を行うことは難しいと指摘する。「ラクリス」は月額料金を払った企業に対して、提携する飲食店の情報を提供することによって、その問題を解決する。「ラクリス」は企業が、全国で60万弱ある飲食店の市場に効率的にアクセスをすることを可能にし、BtoBのプラットホームとして大きな可能性を秘めていると手塚さんは最後に強調した。

 旅は人生に不可欠だと語る藤井瑠華さん(商4)が紹介するのは、農家民宿特化型プラットホーム「のーかる」だ。農家民宿は全国に分散しているため移動距離が短く、人との接触が最小限な上に、宿泊施設自体が旅の目的となり、非日常空間の体験が味わえる、まさにコロナ禍にぴったりな旅のあり方だと、藤井さんは述べる。農家民宿は、キャッシュレス決済ができないなど利便性が低く、認知度も高くない上人材も高齢化しているなどの様々な問題を抱えているため、「のーかる」はコンサルティングを含めたサポートで、解決を目指す。
 コンセプトとして「行く前からワクワクする農家民宿」をかかげる「のーかる」は、その特色として4つの検索機能を搭載する。思い出を共有することで人のぬくもりを感じる「思い出検索」、現在地の近くの農家民宿を提示し移動距離を減らす「現在地検索」、プラットホーム上で、ビュッフェ形式で食べたいものを選択できる「食べたいもの検索」、インスタ映えを意識した「画像検索」などの斬新な4つの検索機能を搭載する予定だ。

 また授業に参加した学生の中で投票によって4人の優秀な発表が選ばれた。その中でも、難聴患者が楽しく会話するためのプロダクト「イアカラー」を提示した坂本忠謙さん(経済2年)の発表を紹介する。

 大のおじいちゃん子だという坂本さんは、中等度の難聴を患うおじいちゃんの悩みを解決したく、このプロダクトを考えた。実際に難聴患者と接点をもつ大学生にインタビューをした結果、「難聴患者に話しかける人」のために、コミュニケーションのハードルを下げるサービスが必要なことに気がついた。
 それを実現するプロダクトが、どれくらいの声量で話せば良いかをLEDの色で知らせるネックレス、「イアカラー」だ。耳の形をした「イアカラー」は難聴患者自身のネックにつけることで、補聴器や耳に装着する専用の声測定器と連携して、声量に応じて光る。大きすぎるときは赤に、適度の時は緑に、小さすぎるときは黄色に光り、難聴患者の人とも積極的にそして楽しく会話することができる。坂本さんは自分の思いとして、難聴患者の人にこのイアカラーを使ってもらうことで、人との会話を通して幸せになってほしいと語った。

 講義の最後に各審査員がコメントを述べた。鎌田さんは「どれも素晴らしい発表で、選ばれた3つ以外も非常に良かった。選ばれなかった人もいい経験にしてほしい」と発表者を称えた。「コロナ禍の中で、若い人の中でコミュニケーションが大きな課題になっていることが改めて認知できた。もし実際に事業にしたい人がいれば、全力でサポートします」と出張さんはエールを送った。江川特任教授は「短い準備期間だったが、多様で質の高いアイデアがたくさん出てきて、とても興味深かった。発表者それぞれが自分に近い課題を設定し、それを解決するための斬新なアプローチを打ち出していた。多くの人が仮想の話として発表しただろうが、是非実現してほしい」とコメントし、講義を締めくくった。