昨年(2020年)10月17日、文部科学省からの故中曾根康弘元首相への弔意表明を求める通知に応じて、本学でも法人本部棟屋上にて半旗の掲揚が行われた。同日、本部棟前ではこれに反対する院生有志によって抗議デモが行われた。
弔意表明通知は、文部科学省から、国立大学法人をはじめとする各教育機関に加藤勝信官房長官名義で哀悼の意の表明を依頼するもの。これは、同日開催の中曾根元首相の自民党・内閣合同葬にあわせ、2日に各府省庁で弔旗掲揚と午後2時10分の黙とうが決定されたことに基づいており、国立大学でも、哀悼の意の表明として同様のものを行うとされた。この通知を受け、前例を踏まえ、半旗の掲揚が行われるというメッセージが総務部から教職員に対して15日の時点で送られた。
教員とのやり取りから半旗が掲揚されるとの情報を得たことをきっかけに、掲揚前日である16日に抗議活動が企画され、その日のうちに院生自治会理事会のツイッターから告知ツイートがなされた。ツイートは5000回以上拡散され、多くのコメントを集めた。
当日は雨の中、予定時刻に院生有志20人が集った。中には「私は認めません」と書かれた自作のプラボードを掲げる参加者もいた。メガホンを持った参加者による「よりによって本学が国からの指示に従って半旗を掲揚したことに怒りを感じている」「明治天皇が死んだときの前例にのっとるというのも言い訳に過ぎず、掲揚しなかった際の不都合を恐れて掲げたにすぎない」というスピーチが行われ、その後の号令のもと、法人本部棟の真下から、参加者による「黙とう反対」「黙とう粉砕」のコールが拡声器を通じて西キャンパスに響いた。新型コロナウイルスの影響で入構が規制されているなかで、今回の抗議活動をインターネットで知り、関係者以外が入構できない関係上、柵の外から抗議活動を眺める学外者もいた。
主催者は今回の抗議運動は国旗国歌法の施行翌年の1999年に起こった半旗掲揚とその引き下ろしが念頭にあったと話す。今回の抗議運動も、そのときと同様に、それぞれ異なる背景を持つ人々が、違った理由で国からの「弔うべき」という介入に反対する形で自然に生じたものだという。ある参加者は「大学自治の原則があるのに、政府の命令にしたがうことの意味がわからない。自治の筋を通してほしい。忖度に巻き込まれないでほしい」と憤る。また、別の参加者は総務部からの連絡にあった「前例に従って」という部分を問題視する。「大学が前例にのっとるというベースで、上から下へと命令を流すだけでは自治の放棄。自分たちで一度立ち止まって考えられるはずだ」と話す。「日の丸」が持つシンボリックな意味に踏み込んだ参加者もいた。「日の丸は過去の戦争・侵略と結びついたものであり、そういったものを構成員との協議なく掲げたことも問題だ」。中曽根元首相への反発をあげる参加者もおり、抗議活動参加の理由はさまざまであった。ある参加者はこうした状況を踏まえたうえで、「多様な参加者がいて、反対しているということを示すことに価値があった。ツイッターでも多くのRTやいいねといった反応があった。こうしたことは潜在的にこの問題に対しておかしいと思う人が多かった証左だ」と話した。