ロースクール生転落死裁判 控訴審 「アウティング許されない」

 11月25日、本学法科大学院生転落死裁判の控訴審の判決が、東京高裁で下された。大学が適切な処置を取らなかったとして損害賠償を求める遺族の控訴は棄却された。第一審の東京地裁も訴訟を退けており、遺族側は2019年3月に大学側を控訴していた。遺族側は上告をしない方針。
 判決では、一審同様大学側に安全配慮義務違反は認められなかった一方、一審では触れられなかったアウティング(※)の不法性が言及された。村上正敏裁判長は、アウティングを「人格権ないしはプライバシー権などを著しく侵害する許されない行為」とした。
 遺族側は判決後の記者会見で、アウティングが不法行為だと明言されたことへの喜びを表した。新聞各紙によれば、男子学生の母親は「アウティングが許されない行為であると認められただけで、大変うれしく思っている」と語った。妹は「誰もが安心して学べるような大学になってほしい」と希望を述べた。
 本学はウェブサイトで、事実に基づいて大学側の立場を明らかにしてきたとした上で、「引き続き、学内におけるマイノリティーの方々の権利についての啓発と保護に努めて参ります」とコメントした。また、12月9日に判決が確定したことを受けては、遺族への哀悼の意を示し、「多様性を尊重し、包容力のある、そして何より命を大切にするキャンパス・コミュニティであり続けるために、本学は不断の努力を続けていく所存です」と述べた。
※……性的指向や性自認を、本人の同意なしに、第三者に暴露すること。


一橋大学アウティング事件
15年8月、同級生に自身が同性愛者であることをアウティングされた本学法科大学院の男子学生(当時25歳)が、大学の校舎から転落死した事件。男子学生は大学の教員やハラスメント相談室に、アウティング被害を相談していた。遺族は16年に大学と同級生を提訴したが、同級生との間には、18年1月に和解が成立した。なお同年4月1日には、本学がある東京都国立市で、アウティングを禁止する条例が施行されている。