オンライン講義の現場に焦点を当てる本連載の3回目は、来年度もオンライン開講が決定している大教室講義をフィーチャーする。「原価計算」などを担当する挽文子教授(経営管理研究科)と「刑法」などを担当する本庄武教授(法学研究科)に話を聞いた。挽教授はオンデマンドとライブを併用、本庄教授はオンデマンド方式のみで春夏学期の講義を行った。
反応分からず対策に腐心、準備時間は大幅増
両教授はともに、受講生の生の反応が分からない状況下でいかに学生の理解度を把握するかに腐心した。対策として、挽教授は講義ビデオを録画する際、TAやオブザーバーに顔出しで参加してもらい、彼らの反応を見ながら進めた。通常の講義内容に加えて、最後にその回の要点や学習上の注意点を彼らに答えてもらった上でアップしたという。
ライブ配信中には、Zoomのチャット機能を用いて学生から質問を募り、受講者全員で共有した。さらに投票機能も活用して、おさらいする箇所を決めた。挽教授は「教室で挙手する形式と異なり、他人の目を気にすることなく分からない点を聞けたのではないか」と振り返る。例年通り毎回manabaを使った小テストを行うことに加えて、このような工夫をしたことにより、学生の習熟度は例年と比較しても十分な水準になった。一方で、こうした緻密な対応の結果、授業準備時間はTAともども約2倍に伸びたという。
本庄教授は、定期的にmanaba上で小テストを行い、理解度の把握につなげた。また、録画方式の体力的・時間的負担にも触れ「105分間話し続けるのは、教室で講義する場合と比べ休む間がない。例年であれば板書する事項も、今年度は講義資料にあらかじめ盛り込まなければならず、授業準備時間は大幅に増えた」と話した。
試験は方針変えて対応、期末試験に加えてレポートの用意も
挽教授は、オンライン上で数百人が期末試験を受けることによるサーバーへの影響を危惧し、急きょレポートを課して成績評価に加算した。「レポートは記述式なので採点が非常に大変だったが、パターンの決まった計算問題より記述の論理展開が得意な学生が報われたのではないか」と挽教授は語る。
例年は六法のみ持ち込み可で試験を行っている本庄教授は今年、資料の参照によって簡単に答えが出る知識問題を排除した。代わりに、応用力を問う長めの事例問題を用意した。結果として平均点こそ低下したが、成績分布には影響がなかった。通信環境による回答の遅れについても「微々たるもので想定の範囲内だった。採点にも特に大きな問題は生じなかった」と振り返る。